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パドックⅢ カスタマイズ計画 ブログ

シリンダーヘッド加工・RC390

2025-02-22
     ①ポート加工
     ②INポート
     ③EXポート
     ④EXポート
     ⑤INポート
   ⑥加工前INポート
   ⑦加工前EXポート
     ⑧リークテスト
  ⑨VrⅡ加工前(ヘッド面)
    ⑩VrⅡ加工後
 ´24シーズン終盤、RC390エンジン(当店のRCに搭載)整備をしました。トラブルを起こして壊れたエンジンを修復するための整備です。せっかくなのでチューンアップをしたいとところですが、エンジン各部の強度に余裕が無さそう(トラブルの根本の原因が不明)でしたので、「シリンダーヘッド加工ポート研磨)」だけをしておくことにしました。

 設計の新しい「高回転高出力」を狙った単気筒エンジン(水冷DOHC4バルブ)だけあって、吸排気ポートはポート径は十分に広く、形状(曲がり具合・径の変化)も特に大きく変える必要はなさそうでした。ただし、けっこう鋳物肌は粗く、バルブシートのための切削加工でできた段差もかなり大きかったので、そのあたりを「なめらか」にすることを目指して削ることにしました。

 リューターでの粗削り・サンドペーパーによる仕上げと順調にポート加工を進めて、ヘッド面を磨いて完成する予定だったのですが、深刻な問題が明らかになりました。

 元々トラブルで壊れたエンジンですが、その状況は、コンロッドボルトが折れてピストンがシリンダーヘッドにぶつかり、その後コンロッドやコンロッドキャップがクランクシャフトに巻き込まれて周辺(クランクケース・シリンダーなど)を破壊されていたものでした。※大物部品は中古エンジン(1機)より部品を使用
 シリンダーヘッドには確かに打痕はあったのですが、バルブは曲がってはいたものの、めり込んた形跡もなく(バルブガイドも無事)、多少ヘッド面を磨く(ヘッドガスケットの除去を兼ねて)程度で再使用出来そうだと考えていました。
 シリンダーヘッド関連の最終作業(研磨工程では、ヘッド面に傷が入る可能性を考慮してガスケットを貼り付けた状態で研磨作業をしています)として、ヘッド面をオイルストーンで磨き始めてみれば、少々のことではその打痕が消えないことに気付きました。ようやく、その時点でただの打痕とは言えないほどの「陥没」だと判明しました。簡易的(ストレートエッジとシクネスゲージ)な測定をしてみると、最深部で0.2mm程度はありました。
 水冷エンジンのシリンダーヘッドは、燃焼室上部にウォータージャケット(冷却水の通路)が設けられていて、「ドーム状」になっていますが、軽量化冷却効率の向上のために、かなり支える部分を少なく(その分冷却水容量が増量)してあるようで、ドーム全体が押し込まれたようになったと思われます。

 けっこう深刻な状態で、対処して使うにしてもリスクを伴うことは確かなので、とりあえずは後で考えることにして、オーバーホールベース(こちらもトラブルがあるものの、クランクケース・クランクシャフト・シリンダーは使用可能)に用意した中古エンジンから外したシリンダーヘッドに同様の加工を施して、当初予定の仕様(ポート加工のみ=Vr1)としました。
 
 Vr1シリンダーヘッドを用いてエンジンを組み立て、エンジンをフレームに搭載し修理を終えました。その後、エンジンを降ろしている間に切れていた車検のための整備を施して、検査を受けておきました。※すでに冬季に入っていましたが、いつでも慣らし運転が出来るように備えておきたかったので。

 さて、後回しにしていた問題の有ったシリンダーヘッドですが、よく観てみると燃焼室全体均等に押し込まれた状態でした。バルブシート近辺もずれて(上方)いて、バルブガイドとの角度に僅かに傾きが出ていました。ただ極僅かでしたので、バルブシートカット(特殊工具ダイヤモンドシートカッターによる研磨)を施せば修正出来る程度と思われました。
 それならと、約0.2mmの「ヘッド面研磨(圧縮比UP)」と併せて行い、使えるようにすることにしました。※Vr2
 この寸法の研磨だと、いつもならば外注に出してフライス盤で削ってもらっている研磨量ですが、一気筒の小さなヘッドだということもあり、オイルストーンで一貫して削って(オイルストーンでは通常0.05mm程度までの修正をしていますので、結構しんどい作業です)しまいました。※計算では、0.2mmの面研で、圧縮比は13.0(純正=12.6:1)に変化します。

 当面は「Vr1」となりますが、少しは効果が出てくれるのか楽しみ(慣らし運転が少々つらいのですが)です。

※実はこのエンジンはお客様(Y様号)の車両に搭載されていた物です。怪我をする前年(´22)の走行会でトラブルが起こりました。部品調達に時間を要してしまい、春の繁忙期を過ぎて多少余裕のできる梅雨以降に作業を再開する予定でいましたが、その間に例の事故で怪我を負って、とてもエンジン整備が出来ないことになってしまいました。
 ちょうど、その時期には相前後して他機(空冷4st4気筒1100cc&400cc)のエンジン修理も入庫(こちらのお二方にもお待ちいただきました)していました。エンジン整備が出来そうな状態まてに回復した昨年夏頃に、順に取り掛かることにしたものの、一般整備をこなしながらではとても期間が長くなりそうでしたので、Y様には、当店のRC390のエンジンの購入・移植(当店の所有エンジンになってしまえば、順番の最後で少しづつやれば良いので)をすることに了承いただきました。比較的軽いRC390のエンジン脱着作業をこなせれたことで自信を得られて、引き続き2機のエンジン整備も、順調(苦労しながらも)に進めることが出来ました。
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