パドックⅢ カスタマイズ計画 ブログ
バッテリー移設&周辺部品製作(前編)・Z1-R
2025-04-21
昨年、「前後18インチラジアルタイヤ仕様」へと足周り換装を施し、ハンドリングのレベルアップに高評価をいただいた「Z1-R」です。続いて「メインハーネス製作」と矢継ぎ早にカスタマイズを進めたのですが、今シーズンオフに向けてもご依頼をいただきました。
この度のご依頼のメイン(いくつかあります)は、現在は何も無い「収納」に関しての依頼です。この車両にはPMC製リヤフェンダー(前半部)/小物入れKIT&フェンダーレスKITが装着されていますが、バッテリーケースは純正のまま使う仕様となっています。その仕様で小物入れを装着してしまうと、バッテリーのメンテナンス(脱着・充電)にかなり手間がかかるので結局取り外してしまい、現状はなにも積載できない状態になっているそうです。※純正バッテリーケースはシート下スペースの最下部に位置していて、その上に小物入れが被さる配置です。後半部のフェンダー部分は下向きコの字断面で製作されているため、書類すら載せることは出来ません。
そこで、ご依頼の内容は、「バッテリーのメンテナンスをし易く」しつつ、「収納スペース」を造ることでした。
また、ご自分で「CRスペシャルキャブレター&パワーフィルター仕様」に換装されていますが、クランクケースブリーザーはホース先端にフィルターを取付けただけの「大気解放」にされているため、保安基準を満たしていません。※ブローバイガス(ピストン下に吹き抜けた未燃焼ガソリン)をエンジンに再度吸入(ブローバイガス還元)させなければなりません。
そこで、ブリーザーホースをエアクリーナー(この仕様ではどれか一つのパワーフィルター)に接続することになりますが、直接接続するとガスに含まれるオイル(霧状)まで吸わせてしまいますので、途中に「オイルキャッチタンク」を設けて極力オイル分を除去することが望ましく、今回同時に製作することになりました。※エアクリーナーBOXが撤去されているので、全体の広さは充分有ります。
結果、シート下スペース(ライダー側)には、バッテリーケース・オイルキャッチタンク・小物入れの3点を製作してレイアウト(そのサイドにはレギュレーター・ヒューズBOXなどの電装品を設置)することになります。
ただ、今回の依頼の条件が「バッテリーメンテナンスがしやすいこと」ですので、どのような配置にすれば良いか?またそれぞれの取付方法(フレーム自体への加工を施さないで済めばベスト)や構造は?などけっこうな難問に挑むことになりました。
フレームにはしっかりとした取付部(ネジ穴の有るステー類)が設けられているのは、「バッテリーケース」用の取付部くらいしか無い(その代わり重いバッテリーと共に電装品をも取付られているので、充分な強度はあると推測されます)という問題を含めて考えた方策が、「オイルキャッチタンクを土台」にして、その上面にベースプレートを取付け、バッテリーケース&小物入れを「乗せる」ようにすることでした。
寸法的にも何とか収まりそうだと考えられたので、順番に製作していくことにしました。
まずは、土台の基礎となる「オイルキャッチタンク」です。
全てを支える役目を担うため、フレームの一部となる位の剛性・強度(フレーム側がそこまで剛性は高く無いため剛性部材とはなりません)になるように作りました。これまでは、この種類(タンク・ケース類)の製作には、アルミ5052材を用いていますが、これには、アルミ7N01材を使いました。立方体になる本体部分は、4mm&5mm厚(天面のみ)・ステー部を6mm厚板材(ステー部下側には支え補強入り)で製作しました。取付方法はラバーを介さないリジットマウントです。天面にはベースプレートを取付けるためのネジ穴(4箇所)を設けています。
これまでに製作した物もそうですが、エンジンからブローバイガスが入ってくるIN側のパイプはタンク壁面を貫通して、反対の壁に突き当たる直前で斜めカットにして、オイル分を壁に付着させつつガスの流入の妨げないようにしています。 ※吐出側はタンク内には突き出さない直付けにして、傾ければ溜まったオイルを排出できるようになっています。
次に、その上にバッテリーケースなどを取付けるための「ベースプレート」です。
シート下スペースを出来るだけ有効に使うため、バッテリーを可能な限り前方寄りに配置するようにしました。そうすると、このベースプレートに相応の曲げ応力が働きます。そのため、7N01材5mm厚板を本体として、両サイドに3mm厚板をリブ状に溶接した「下向きコの字断面」に製作しました。このプレートには後の工程で、上に乗るパーツの取付ネジ穴を開けられますが、剛性の高さと上面が平面となるため、多少ネジ穴を増やしても充分な強度となり、取付場所の微調整が出来るようになっています。
ベースプレートを取付け、バッテリーを仮乗せしてみると、その高さはシート底面まであまり余裕の無い状態でした。
当初はケース(ボックス)状にしてラバーマウント(土台部分がリジットマウントなため振動対策は必須)にして搭載予定でしたが、それでは高さが足らなくなりました。そこでバッテリーは「ベースプレートに直乗せ」(5mm厚クッション材を敷いて)として、周りを囲んだだけの「ケージ状」の「バッテリーケージ」を製作することにしました。
周りから支えるだけで済むので強度もそれほど高くなくても良くなり、軽量化も狙って、2mm厚板(それでも重いバッテリー支えるので7N01材)で本体を製作しステー部を3mm厚板で囲むように取付けラバーマウントにしました。※底面が無いので、単体では浮いたように取り付けられます。
バッテリーケージの形状・搭載位置が決まって、残りのスペースを埋めるように「小物入れ」を製作しました。ベースプレートへは小物入れ底にラバーグロメットを2箇所設け、後部横メンバーにある純正ステー部にブラケットで支える3点支持にしています。フレームの間隔の変化やフェンダープレートの傾斜・バッテリーケージの形状にできるだけ添わせるのに、単純には展開した寸法が出せず、底面から少しずつ組み上げていく手法で製作しなければならず、簡単そうではあるものの、けっこう苦労しています。
前側スペースの最後に、電装品の配置を考えましたが、バッテリーケージ・小物入れ共サイドが平面でその内側には少し余裕(クッション材の貼り付けなど)を取っていたので、レギュレーターをバッテリーケージ右サイドに、ヒューズボックス(多系統ヒューズ)を小物入れ左サイドに穴を開けただけで、新たなステー類を製作することなくボルト止めが出来ました。
バッテリーの搭載位置の変更によって、バッテリーハーネスが届かなくなりましたが、取付角度と取り廻しの変更だけで再使用出来ました。
※最終的に、フレームには何も加工を施すことなく各パーツの取付が可能な仕様に仕上がりました。
