パドックⅢ カスタマイズ計画 ブログ
試作・本命キックペダル・SR
2025-07-01
昨年、脚力(特に瞬発力)不足をきっかけに取り組んでいた、SRの「ショートタイプキックペダル」でしたが、実験によって適正値を得られた後には、本命と言える材質での製作に取り掛かる予定でいました。
ただ、その材質の適正(強度・溶接性)や分類など、材料を選択・入手までに調べなければならないことが多く、結局昨シーズン内には間に合いそうに無かったので、翌年に回すことにしていました。
さて高強度・軽量な材質となると、「チタン=Ti」が思い浮かびますが、この際なので「純チタン系=EXマフラーなどに純チタン2種材を使用」よりもさらに強度の高い「64チタン(通称)=Ti6Al4V」にしようと思いました。64チタンは、現在市場に出ている金属で最高クラスの引張強度の金属です。その高強度・軽量(純鉄に対する比重が約0.55)からバイクの部品としては、アクスルシャフトやボルトなどに用いられています。ただし他には溶接を施した何らかの製品(バイク関係の)を見かけたことが無く、溶接性などの特性を調べてみなければなりませんでした。※溶接性の良否は可能かどうかではなく、溶接部の強度の低下の度合(母材強度を100として何%になるか)で判定されます。
また、どのような形(サイズ・販売単位)で販売されているか検索してみても、「64チタン」ではほとんど見つかりませんでした。金属業界での正しい分類なども調べてみる必要もありました。
分類は最後に記述しますが、溶接適性は「適=約70%」となっていて、若干強度は低下するものの、その分ビードを盛る(溶接棒で補填)ことで、母材と同等の強度に出来そうでした。判明した分類番号で材料も選ぶことが出来るようになり、溶接機(TIG溶接用)と含めて発注しました。※海外からの発送でしたので、全て揃うのに結構時間が掛かりました。
全てが揃わずとも、入荷した物から出来る作業を少しずつ進めました。基本的な製作方法はアルミ7N01材で作った方法と同じですが、寸法は強度がアップしたことから変更しています。
キックアーム部を15mm径・キックバー10mm径(純正と同じ)として、8mm厚板で製作したストッパー部はアルミ材製作時と同様に長く伸ばして根元(ピボット部とアーム部の溶接部分)の 補強を兼ねさせています。ピボット部を35mm径(アルミ製と同じ)としましたが、強度の問題ではなく、出来るだけ安価に少量販売されている物を選んだからです。
実験結果で、アーム長(キックシャフト中心線~キックバー中心線)をWM製より15mm程度短くしたものが良好なのが分かっていましたが、今回は10mm(純正より15mm)として、実験時よりは少し伸ばしました。※デコンプ(圧縮を抜く)してキック始動位置出しをするのに、回り過ぎることを緩和するためです。
また、アルミ材用に嵌合長を伸ばしたボスを今作でも急遽使うことにしたので、ピボット部を当初予定にはなかった2段重ねにして溶接しています。※重量が無駄に増しますが、単純に加工したボスがもったいなかったからです。
実はアルミ製キックペダルは、その後ほどなくして破断して使えなくなっていました。※溶接部が完全には芯まで溶接されていなかった(厚物では溶接部位をV字谷状にして溶接しますが、その幅が狭く表層が先に融合してしまった結果です) ことと、再溶接でもろくなっていたようです。
完成した「64チタン製キックペダル」で、久しぶりにショートタイプでキック始動をしましたが、やはりクランクシャフトが勢い良く回る感触があり、始動性の向上にも貢献出来ると期待出来ます。かなり、しっかりした手応え(強度的)には感じますが、当面、始動性と共に、アームの曲がりやストッパー部の変形・溶接部など強度面も検証していくことにしています。
※キックラバーストッパープレートはアルミ製を再利用しているので、「オール64チタン製」とはなっていないのですが、せっかくなので後ほど製作する予定です。
※金属は各国で独自の規格があり、通称「64チタン」の分類(チタニウムの項目)は、アメリカ規格=Gr(グレード)5・中国規格=TC4・日本JIS規格=60種、また、結晶構造的にはα-β型チタン合金類となっているようです。
※重量はけっこうな軽量化を達成しました。64チタンキックペダル+純正加工ロングボス=545g/WM製+純正標準ボス=855g(各々キックラバー等全て組込)となり、410g軽くなりました。今後の検証結果によっては、ピボット部分の小型化も試す予定なので、さらなる軽量化は可能だと思います。
※チタン材(特に64チタン)は、加工が難しい(アルミ・鋼材に比べて)ため、これまではあまり積極的には扱っていませんでしたが、メリットの大きい素材ですので今後は他のパーツの製作も考えてみようと思います。


