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ステンメッシュホース再換装・SR
2023-09-18
未だにバイクに乗れるほどには体は回復していませんが、その間に、かねてよりSRで気掛かりとなっていたことを施すことにしました。
それは、「ブレーキホースの再換装」です。実際にはこの度はリヤブレーキホースのみですが、過去の画像を見比べていただければ分かるように、フロントに関しては昨年すでに再換装を済ませていました。
このSRのカスタマイズのメインは、ZXR400の前後足回り換装ですから、当初から「ステンレスメッシュホース」に換装していました。ただ、出来るだけコストを掛けないように、手持ち(中古品)のステンレスメッシュホースを組み直して使っていました。
過去には、ステンレスメッシュホースと言えば「アルミ製フィッティング」が一般的だったため、この中古品もアルミ製でした。気掛かりだった原因は、このアルミ製フィッティングです。アルミ製は軽量なのでレースの現場でもかなり普及しましたが、転倒した際に、強く引っ張られた場合には折損することも多く、強度はあまり高くないことは分かってはいました。※RSやTZシリーズの市販シーシングマシンには、鉄製フィッティングのステンレスメッシュホースが標準装備されていました。
ステンレスメッシュホース(アルミ製フィッティングが主流)がカスタマイズとして普及して、ある程度の期間を経た頃から、フィッティング(ソケット・アダプター)にクラックが入った車両を見かけることが増えました。元々のレイアウト・組付けに問題(無理な力が掛かって)が有ったり、保管環境が悪い場合がほとんどでしたが、やはり経年劣化は避けられないと考えられました。
´00年代後期に、「ステンレス製フィッティング」が販売されるようになってからは、ブレーキホースのカスタマイズを希望されるお客様には、アルミ製フィッティングの不安点を説明して、若干高価ですが「ステンレス製フィッティング」のステンレスメッシュホースにしていただくようにしました。
当店のSRにも、出来るだけ早い時期に再換装しなければと思いつつ、他のカスタマイズに向かってしまい後回しにしてしまっていました。
昨年、同じように以前にアルミ製だったお客様に「ステンレス製フィッティング」への再換装をおすすめした際に、同時にSRも施すことにして、まずは重要なフロントを先に換えておきました。
性能面や効果に変化があるものは、いずれしっかりと乗り比べが出来るようになってからにしようと思っていますが、今回のブレーキホース再換装は効果は変わらないため、このタイミングで行いました。ようやく再換装を終えて、一安心しました。
※ステンレス製のフィッティングは、ソケットとアダプターとのネジ部にモリブデングリスを塗布しなければならない(テーパー嵌合部には塗布してはならない)など、取扱いには注意が必要です。
実証・SR
2023-08-10
先日、事故のご報告をしましたが、さてSRはどうなったかと言うと、フロントタイヤロック(ほぼ直立状態)からの転倒で乗用車への直撃は免れたようでした。転倒(右側)直後にシート後部付近をどこか(相手車両か詳細は不明)にぶつけた破損が見受けられましたが、直撃をまぬがれたおかげで、幸い(?)にも大きな損傷は見受けられません(人間は重傷を負いましたが)でした。
そこで、あまり検証したくはなかったことが、図らずも検証されたことになりました。これまでに、いろいろなワンオフパーツを製作してきましたが、転倒した際(主に一般的な速度域における)には、どのようなダメージがあるのか?という実地検証です。
最も気になっていたのは、やはり転倒時のダメージ軽減を狙った「スライダー」です。画像1が転倒した右側面のスライダー周辺の画像です。スライダー先端が接地していくらか削れた後、サブフレームのボス溶接部が割れて分離したようです。この時にはシュラウド(シリンダー冷却用)を装着していましたので、そのマウントブラケット(スライダーと共締め)を曲げながらも脱落には至らずにぶら下がっていました。
周辺のパーツは、スライダー取付部のサブフレーム本体とステアリングダンパー(ボディ・ロッド共)に曲がりは無く、フューエルタンクにはハンドルバーの曲がりによるわずかな凹みが出来たくらいで、スライダーとしては、しっかりと守ってくれたようです。概ね狙い通りの結果となって、ある意味喜ばしい(?)結果を得られました。
次には、損傷の大きく見えた「リヤフェンダーレスKIT=テールランプ・ウィンカー・ナンバープレートブラケット」です。
元々このパーツを製作した際に、リヤ周りの剛性確保を狙って、左右リヤフレームの連結には「アルミ7N01丸棒材」を用いるのを主体とする設計としていました。そのため、他の湾曲させた各マウント部にも、丸棒材を使うことにしました。ただ、丸棒材同士の溶接に全溶接(中心部に至るまでの溶接)をしてしまうと、このパーツの強度が上がり過ぎてしまうと考え、周囲をぐるりと溶接するだけに留めていました。
そうした溶接をしていたため、衝撃を受けた際に、各々の部材の溶接部で分離して3つに分かれてバラバラになり、大きく損傷したように見えたようです。よく見ると各部材には、さほど変形は無く、これも「程よく」衝撃を逃がしてくれたようです。もちろん、リヤフレーム部分には全く曲がりは見られませんでした。
ステップ周りはステップバーのスタッドボルトとブレーキペダルの曲がりで済んだようで、ステッププレートやマスターシリンダーにはダメージはありませんでした。※ステップバー自体は先端は削れていたものの、曲がってはいませんでしたが、交換することにしました。
ハンドルバーの曲がりはわずかなもので、特に修正も施さずにクランプ部のズレと併せて取付位置を変えて対処すれば良いほどでした。
結果として、わずかなパーツ交換と、曲がり修正・再溶接で修復出来ました。アルミ製ワンオフパーツの製作における、各パーツの強度設定がほぼ間違いではなかったと確認することが出来て、自信が付いたのが喜ばしいことでした。
※スピードメーターが若干変形してレンズが割れてしまいましたが、指針は作動するようでしたので、当面はこのまま使うことにしました。
元々、「フロントカウリング」の装着と併せて、メーター周りの再カスタムを計画していました。どんな仕様にするかは、まだ思案中でしたが、この度の事故で大きな損傷も無く収まって、改めてホッとしました。この後も更なるカスタマイズを進めていく予定です。
続・FCRキャブレター組替・Z1-R
2023-06-11
Z1-RのFCRキャブレターを、35mmから39mm径(中古品=水冷GPZ1100用)へと組替えることになりましたが、この中古品は、本体内側のスライドバルブローラーの当たり面に凹みが生じてしまい、使用出来なくなった物でした。この不具合が起こった当時には無かった「ワイドローラー」が製作されるようになって、再利用が可能になってくれました。※保管していた物を、このたび買い取らせていただきました。
その「ワイドローラーSET」を入手したところで、組替作業に取り掛かりました。
Z系と水冷GPZでは、気筒間の「ピッチ」と「加速ポンプの取付位置」が違うため、連結に関係する部品をZ用を分解し、GPZ用に移植して組み替えていきます。#2キャブレターについていた加速ポンプを#4(右端)キャブレターに移すにあたって、#4キャブレター本体にわずかに加工(レバーが干渉)が必要でしたが、最も懸念していた「スピゴット」(各車種用に製作された、エンジン側インシュレーターに差し込まれる部品)は、外径がZ系と全く同じで、そのまま使用出来ました。※Z1用FCRキャブレターは、Z1000J用インシュレーター(Z1より大径)に換装するのが前提の設計となっています。
また、長期間保管されていたためゴム部品を全て交換するとともに、以前に施したゼファー1100用のデータを元に、仮設定の各種ジェット類に組み直しました。これで「組替」にかかる作業は完了です。
この「仮設定」の状態でエンジン始動を試みると、運よくそこそこ合っていたようで始動性はとても良く、一発でエンジンが掛かってくれました。始動後のアイドリングも安定した状態で、暖気後のプレセッティング(走行前)でも、わずかな変更・調整で低中開度域の「レスポンス」はかなり良くなり、大径化による「悪影響」は、ほとんど感じられません。それどころかブリッピングした際の、図太くなった吸気音と排気音で、そのパフォーマンスには期待が高まりました。メインジェットが受け持つ全開域は濃い目のようでしたので、2サイズほど小さくした程度で実走セッティングに移りました。※無負荷での長時間全開は禁物です。
低速走行や加減速走行など、色々なシチュエーションを想定しつつ、実走でのセッティングを進めて、2000rpm位の極低回転でも巡航出来て、一般路走行に問題無く使えるようになりました。多少ラフなスロットルワークでも、エンジンはレスポンスして加速させてくれます。やはり全開域では濃い目の症状が出ていたので、燃料を絞って(小さくする)いって、かなり全開でも吹け上がりが良くなってきたところで、後日ワインディング路に持ち込むことにしました。
実際にワインディング路に持ち込むことが出来たのは、梅雨入りも間近にせまった5月末頃でした。かなり蒸し暑さ(気温30℃弱・高湿度)を感じるほどで、セッティングには、あまり向いている気象条件とは言えませんでしたが、セッティングを進めることにしました。
まずは試走してみると、スロットル全開域と全閉近くに濃い目の症状が出ていましたので、やはり燃料を絞っていくことになりました。2系統の燃調を合わせていくと、全開加速中の7000rpm付近にわずかに回転上昇の鈍くなる瞬間が残ったものの、かなり良い状態になりました。
仕上がってきた「FCR39」ですが、そのパフォーマンスは期待以上のものでした。
高回転域でのパワーアップはもとより、何よりも驚いたのは、低目のエンジン回転(4000rpm弱)から大きくスロットルを開けた時の、「レスポンスの良さ」と「力強い加速」です。一般路でのセッティング中から、全体に力強さが増しているのには気付いていましたが、低速コーナー主体のワインディング路で、ここまで「立ち上がり加速」が良くなるとは、想像以上でした。
想定では、低回転域ではスロットルレスポンスや加速を悪くすることのない程度で、35mm径では吸入量が不足していた「中~高回転域」のエンジンパワーを引き出すことを目標としていました。結果として全域でパワー(トルク)アップしていて、まるで排気量をさらに大きくしたエンジンになっているかのように感じるほどでした。※その後、オーナーさんにも試走してもらいましたが、同じ感想を持たれて、ここまで変わるものかと驚かれていました。
※特に低速コーナーの立ち上がりで、駆動力が上がった影響で、車体(リヤ)が押し下げられ旋回時の車体姿勢が乱れるるようになりました。燃調セッティングに引き続き、「リヤショックアブソーバー」のセッティング変更も施して、しっかりと踏ん張って有効に2次旋回につなげられるようにしました。
スロットルの開け易さがあって、不用意にこれまで通り開けてしまうと遥かにバイクが押し出されて、狙ったラインを外してしまうので、しっかり旋回をして加速態勢を作るように注意して走りました。オーナーさんにも、ライディング面でも以前とは意識を変えてもらうようにお伝えしました。
※低中回転(7000rpmまで)が想像以上の良さになった影で、明らかになったことがありました。39mm径にしたことで全域でパワーアップしているものの、7000rpm付近の僅かな回転上昇の鈍りが残ったことをはじめ、全開での中回転から高回転へのつながりに問題を感じたことです。
これは、おそらくワンオフ製作したエキゾーストマフラーの「特性」によるものだと思われます。もともと「低中回転でのトルクアップ」を狙った物ですから、それは達成していたのですが、少し低中回転向けに「振り過ぎ」ていたのだと思います。35mm径でははっきりしなかったものが、39mm径で特性が引き出された結果、形となって現れたのでしょう。(もちろん、エキゾーストマフラー製作において、一度でベストな物が出来るとは思ってはいません)
今後、どうするかはオーナーさんと相談しながら考えていきますが、排気系・吸気系と仕様変更をして来て、その変化に驚きと共に、新たな興味も持たれたようなので、もう少しお付き合いいただけるかもしれません。
FCRキャブレター組替・Z1-R
2023-06-03
昨年(2022年春)、当店オリジナルのフルエキゾーストマフラー(4-2-1集合・チタン輪切り溶接工法)を製作させていただいた「Z1-R」ですが、狙いであった低中回転域のトルクアップを達成することが出来ました。
ノーマル仕様の5速トランスミッションのままだと、どうしてもエンジン回転がコーナー立ち上がりに合わない場面がありますが、多少回転が落ち過ぎても「立ち上がり加速」につなげられるようになって、ずいぶんと乗りやすくなってくれました。
そこで、以前から気になっていたことが、さらに強くなってきました。それが、「キャブレターの口径」の問題です。
そもそも、このZ1-Rに搭載されているキャブレターを含むエンジン関連は、前身である「18インチカスタムZ1」から移植したものです。そのZ1は、キャブレターの他にも欠品多数であったベース車両から、レストアを兼ねてカスタマイズを進めた車両でした。エンジン本体は状態を確認したところ、それほど悪くなかったことから、まずはそのまま(オーバーホールも無し)使うことにして、カスタマイズは「車体製作」から段階的に進めることになりました。
そのため、欠品していたキャブレターは最初から「FCR」にはするものの、ノーマルエンジンに合わせて、無難な「35mm径」をチョイスしていました。
その数年後、1015cc(ワイセコ製ピストン)/ヨシムラ製ST-2カムシャフトを中心とした、エンジンチューンを施しました。その際にも、Z系としては、あまり大きくない排気量(後のZ1000Aと同排気量)と、極太エキゾーストパイプ&シンプルな4-1集合(ナイトロレーシング製=オーナーさんのチョイス)の排気系の組み合わせでは、低中回転のトルク不足は予想されたので、キャブレターは変更せずに35mmのままで、扱いやすさを優先(出力的には不足気味)することになりました。※大径(特に過大な)キャブレターは、一般的に全開域でのパワーは出やすいものの、低中開度域のセッティングがシビアになりやすく、良いスロットルレスポンスを得にくくなります。
排気系の変更によって、低中回転が補強された今であれば、キャブレターを「大径化」しても前述の心配は薄くなっていると思われました。その前提で、オーナーさんに、かねてよりキャブレターの口径不足でエンジンポテンシャルを出し切れていないと考えていたと説明したところ、「大径FCR」への換装を快諾いただきました。
大径化にあたって、37mmと39mm(Z系には35~41mmのラインナップがあります)のどちらにするかの選択は一任されましたが、私自身の興味(期待)もあって39mm径にチャレンジすることにしました。その選択には、FCR39の中古品(水冷GPZ1100用)を在庫していたことも後押ししています。近年ではFCRキャブレターも値上がり(4気筒用FCR41は20万円超)していて、気軽には試せないところですが、中古ベースであれば比較的安価に出来ますので、ここで役に立ってくれました。
前置きが長くなってしまいましたので、実際の組替え作業以降は、日を改めてご報告いたします。
※確認したところ、カスタマイズ事例の「Z1-R」の紹介ページに、キャブレターは35mmであったものを「FCR37」と間違えて記載していました。改めて訂正いたします。
検証・SR(2023冬)
2023-05-14
3月には暖かい日も多くなり、整備車両の試運転ではたびたびバイクに乗っていたものの、忙しいこともあって、なかなか自分のバイクには乗れずにいました。ゴールデンウイークに入ってひと段落したので、ようやく自身のシーズンインすることが出来ました。
シーズン初乗りに当たっては、このシーズンオフの間に施したカスタマイズの検証が出来ることも楽しみにしていました。
まずは、エンジン管理のために設置した「オイルプレッシャーメーター」ですが、少し予想が外れた残念な結果が出ました。
暖機運転を終了して走行開始する頃(シリンダー温度60℃/油温40℃位)には、アイドリング回転での油圧が「0.2~0.3kg/cm² 」はあったものの、走り出して油温が60℃を超える頃には、エンジン回転が3000rpm以下だとほぼ「0kg/cm²」に油圧表示は下がっていました。エンジン回転を上げると0.1~0.3kg/cm²へと油圧が上がってはいくので、計測出来てはいるのですが、さらに油温が上がった場合に計測そのものが出来るのか不安を感じる往路を過ごしました。
ワインディング路で高回転まで回して、油温80℃超の適温域になると、エンジン回転5~6000rpmで0.1~0.2kg/cm²を表示していて、ようやく数値が出ているといった程度でした。
このくらい低い数値だと、わずかな変化は捉えられないため、トラブル(潤滑系の)が起こっているかどうか?の目安程度にはなるものの、その前兆の、油圧のわずかな変化(低下)までは見分けられそうにありませんでした。
やはり、もっとオイルポンプの吐出口に近い検出点にしたいところですが、なかなか難しいことなので、今後の課題となりました。
次に、「ステップ関連」の変更では、まずまずの感触でした。
ステップ位置は程良く上がっていて、普通に乗っている時には膝はそれほどきつく感じない程度に収まっていた上、大きくハングオフしてもステップバーから足が離れることが無くなりました。体重移動もしやすくなって、気持ち良くライディング出来ていました。
リザーブタンク一体型の「ブレンボ製リヤマスターシリンダー」は、ライディングの邪魔になることも無く、うまくレイアウト出来たようです。予想通り、フィーリングを含めて制動力への影響は、まったく感じ取ることは出来ませんでした。
3番目に、昨シーズンの最終となった走行の後に施した、リヤショックアブソーバー(ナイトロン製)の「セッティング変更」ですが、少しソフト寄りに振り過ぎたように感じたものの、初乗りでまだまだ本調子ではない(人間が)ことから、かえって程良い位だと思いそのままで走り続けました。今後人間の調子が上がって来たら、さらにセッティングを煮詰めて、より良いハンドリングを目指します。
最後に、おまけのような「キックペダルラバー装着」でしたが、効果は抜群で、それほど緊張することなくキック出来るようになり、実に助かっています。
※油温が上がると、低回転では表示が「0kg/cm²」になってしまう現状の油圧計ですが、始動直後(20℃弱)にはアイドリング回転でも「1kg/cm²」以上(オイルはモチュール300V 5W-40)あることから、いかにオイル粘度の変化が油圧に影響するのかを、良く分からせてくれたのは確かです。