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パドックⅢ カスタマイズ計画 ブログ

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フレーム修正機・導入

2023-03-13
①修正機(RSはサンプル)
②固定用支柱・右
③固定用支柱・左
④チェーンブロック
 この度、唐突な成り行きで「フレーム修正機」(中古品=もちろん2輪車専用)を導入しました。

 これまで、フレーム修正を依頼してきたショップさんとは長年のお付き合いで、一般的(修理)な修正をはじめ、オリジナルフレーム製作やフレーム補強を施す際には、お世話になっていました。
 年明けに1台の依頼をしたところ、近年は需要(フレーム修正の)も減ってきて、あまり携わることが無くなっていたことと、高齢化(私自身もそこそこ高齢ですが、かなり体力が必要とのこと)のため、修正機を譲るから自分でやらないか?との提案を受けました。当店においても、修理としてのフレーム修正となると本当に久しぶりなくらいですが、フレーム補強や製作の際の「修正」は、アライメントの精度を出すための「必須となる工程」ですので、自分でやるしかないと譲り受けることにしました。

 安価に譲っていただいたものの、当方では搬送(背の低いユニックが必要)してもらえる業者さんがなかなか見つからずにいましたが、そのショップさんに心当たりを紹介してもらい、搬送することが出来ました。かなりの大きさ・重量なので、整備工場内にはとても設置することは出来ないため、車庫(建築基準は倉庫兼工場)の中に設置しました。修正作業時では、車体前方からの作業が主体となるため、奥に向かってバックで乗せられる位置(中2階の下)に設置しましたが、これが後に良い結果となりました。

 長く使っていなかった修正機は、かなり汚れていて、すぐには作業の出来る状態ではなかったため、まずは「治具の確認」を含めて清掃洗浄からはじめました。そのショップさんで作業を見たことはあったものの、使用方法の分からない治具も多く、実際の作業で試していくしか無さそうでした。
 
 作業に取り掛かると、第一段階の車体を修正機に「固定」することから、問題が発生しました。車体の固定は、フレームの基準である「スイングアームピボット部」に固定用治具(支柱に連結)を差し込み、土台の「中心線上」にセットします。車体下からジャッキで後輪側を持ち上げて、ピボットシャフト(車種によりスイングアームごと外して)を抜き、治具を差し込まなければならないのですが、わずかなズレでも簡単には入りませんでした。強引に叩き込めば入らなくはなさそう(実際にかなり叩いた痕跡あり)でしたが、今後(今回の車両は軽量級)を見据えて、何か他の方法を考えることにしました。

 車体を下から支えた状態では、わずかでも動かすのは難しい(危険も含めて)ことから、上から「吊り下げる」のが良いのではないかと考えました。ここで設置場所の利点が出ました。ちょうど中二階(鉄骨製)の下になるため、鉄骨を利用して「チェーンブロック」を設置することが出来ました。※チェーンブロック(手動)は4輪車のエンジン吊り上げ作業などではポピュラーで、昇降の微調整がしやすい道具です。鉄骨が無かったら「門柱=これもエンジン吊りには必須」が必要になるところでした。
 これで再挑戦したところ、「簡単」に治具も差し込めて車体を固定することが出来ました。あとは、試行錯誤しながらも、なんとか修正作業を進めました。今回の車両では、溶接部付近のクラック(割れ)もあって、溶接作業(200Vの溶接機で整備工場内にしか引いてない)のために1度修正機から移動(前後足回りをいったん仮組)して溶接、そののちに再度修正機にセットして、最終確認(溶接歪みの可能性)する必要がありました。

 初めて自分で行った「フレーム修正」でしたが、なんとか完遂することが出来ました。不慣れなため、治具の当て痕を残したミスをしてしまいましたが、アライメントとして最も重要な「ヘッドパイプの垂直※1」は、しっかりと出せた仕上がりになりました。
 組立後の試運転でも、見事な「直進性」と左右で違和感のない「旋回性」を確認出来て、安心しました。

 治具の扱いや修正時の力の掛け方など、まだまだ技術不足ですが、工夫をしながら研鑽していきたいと思っています。

※1 「ヘッドパイプの垂直」とは、地面と平行なピボット部(後輪が直立)に対して、ヘッドパイプ軸が完全な垂直(進行方向から見て)になることで、「前輪を直立」にすることです。ヘッドパイプ軸がわずかでも傾いた状態では、直進しようとする後輪(車体)に対して、前輪は旋回しようとしてしまい、まともに直進出来なくなるだけでなく、コーナリング時でも前輪と後輪が違う旋回半径を描こうとして無理な力がかかり、スムーズな旋回が出来なくなります。そのため、アライメントの中でも最も重要視しています。
 オリジナルフレーム製作時はもちろんのこと、「フレーム補強」においても、元の状態がすでに曲がっているようでは、補強を施しても[良いフレーム]にはならないので、ヘッドパイプ軸の「チェック」と「修正=必要に応じて」は、欠かせない工程になります。

※2 バイクのフレームは常に大きな力を受け止めているため、どんな車両でも僅かな「歪み」は起こっている可能性はあり、「アライメント点検フレーム修正」は、個人的には「メンテナンス」の一環と考えてはいます。とは言え一般的には「フレーム修正」を施した車両は、「修復歴車」に当たりますので、再販価値(中古車としての)が下がってしまうため、一般の人にはおすすめ出来ないのが実情です。
 そのため、当店では「カスタマイズ」として捉えて、「より良いバイク作り」のメニューのひとつとして「おすすめ」したいと思います。


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