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カスタマイズについて

 パドックⅢでは、豊富なレース活動で得た経験を元に、その知識と技術を傾注して、お客様のご要望に最適なカスタマイズとなるように取り組んでいます。
 また、走行性能に限らず、安全性能や環境性能・保安基準などを含めた取組みで、安心してお乗りいただけるバイク作りを目指しています。

パドックⅢ カスタマイズ計画 ブログ

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バッテリー移設&周辺部品製作・Z1-R(後編)

2025-05-15
①リヤフエンダー&ライセンスプレートホルダー
②リヤフエンダー兼用小物入れ
③テールランプ&ライセンスプレートホルダー
   ④後側収納スペース
⑤パフォーマンスダンパーKIT
⑥アイドルアジャストスクリュー(ホルダー固定式)
⑦カムカバー&ヘッドカバーガスケット
 間に「SRハーネスセット製作」を挟んで紹介しましたが、「バッテリー移設に伴う周辺部品製作Z1-R」の続き「後編」です。

 収納スペースとしてライダー(前)側に小物入れができましたから、もう十分と言えそうでしたが、オーナーさんとしては「この際なので後側(タンデムシート下)のスペースも有効に使えるようにしておきたい」と要望がありました。
 そこで、一枚板(下向きコの字断面)だった「リヤフェンダー」を、「ボックス状」にして新たに製作することになりました。

 元々の純正(鉄製)リヤフエンダーの取付方法が、フレーム側にラバーグロメット(前後に位置したブリッジ状横メンバー2本に2個ずつの計4個)を用いた「ラバーマウント天吊り式」となっているため、新たに製作するフェンダー側には振動対策は必要ありません。※前後のブリッジは平行な高さに並ぶため、平板でも取付可能となり、「フェンダーレスKIT」では、製作しやすいシンプルな形(コの字断面一枚板)にされたのだと分かります。

 ボックス状にするには、当然のこと底面を低くしますが、真横から見る角度で部品が見えるようだとルックスが良くないので゛シートカウル下端に沿うように設定しました。その上で、サイドパネルの上辺をフレームパイプに重なる所に設定すると、約cmの深さを確保することが出来ました。

 箱状の「フェンダー部」ができたところで仮合わせをして「ステー部」を製作しますが、天吊り式なためフレーム内側に計測点が隠れてしまい正しく測定することが出来ない状態(特に前側)でした。
 そこで比較的にポイント(ボルト位置)を出しやすい「後側の底面」にをあけて、ロングボルトアルミカラーを用いて直接フレームに「仮取付け」することにしました。ラバーマウントで完全な固定ではないとは言え、前側の隠れるポイントの採寸がなんとか可能になり「前側ステー部」を製作することが出来ました。※2点吊りでの採寸なため、フロントステー高さは正確にはだせなかったので、少し余裕を持った高さに設定して最後にカラーの厚みで調整するようにしました。
 位置決めのためにカラーを使った「後側仮固定」でしたが、多少は邪魔をしているとは言え、全体では充分なスペースを確保していましたので、最終的にもこの取付方法としました。※本体部=アルミ5052mm厚板/ステー部=7N01mm厚板

 元の仕様では、リヤフェンダーに取付けられていた「ライセンスプレートホルダー」でしたが、リヤフェンダーからテールランプ(ライセンス灯兼用)までの距離が長く、よほど強度を上げないと「しなって(揺れて)」いただろうと思われました。
 そこで、「テールランプベース」下部を伸ばした形にした「兼用タイプ=画像③」とすることにしました。単体の物よりは形状が複雑になりコストは上がりますが、破損の心配が少なく耐久性の高い物になったと思います。※アルミ7N01mm厚板

※今シーズンオフでの他のご依頼が、画像⑤です。特に半信半疑ながら踏み切った「パフォーマンスダンパーKIT=本体ヤマハ製新型アルミボディ/PMC&アクティブKIT」でしたが、納車後の初走行では、その効果に驚きと共にたいへん満足されたそうです。

メイン(の無い)ハーネスセット製作・SR

2025-04-30
①メイン(の無い)ハーネスセット
 ②ヒューズボックス&バッテリー
  ③フレーム右サイド
   ④フレーム左サイド
   ⑤ヘッドバイプ周辺
    ⑥各種リレー
  ⑦4系統ヒューズボックス
   ⑧左サイドカバー内
 昨年、系(2車)用にメインハーネスを製作しましたが、このオフシーズンにはSR(当店デモカー)用のメインハーネスを作ることにしました。

 当店のSR(2001年型)も車齢20年を超えた頃に、「メインハーネス」の交換を考えたことがありました。ただその際には、先に製作した系の方達と同様の不満があり、しばらく引き伸ばすことにしました。
 その不満は、純正メインハーネスにはメインヒューズ1個だけしかない回路であったことです。当時この車両(下取り車)を観た時には「この年式で?」と驚いたものです。SRは設計年代(初期型は1978年型)は古くロングセラーとなりましたが、初期(Z系とほぼ同年代)は仕方ないとしても、その後には改善されて「多系統ヒューズ」になっているだろうと考えていたからです。※サイドスタンドスイッチ回路(戻し忘れ防止)や常時点灯式ヘッドライトの義務化への対応など、仕様変更がないわけではありません。
 SRは「バッテリー(電源)CDI点火方式」ですから、メインヒューズだけの回路だと他の電装系のトラブル(短絡)によるヒューズ切れでも「点火」出来なくなり走行不能になってしまいます。せめて「点火系」だけでも独立して、他の電装系と分離した2系統ヒューズを持つハーネスにしたいと考えていました。※バッテリーを電源としない「マグネトーCDI点火(多くの2stエンジン車)」であれば、ヒューズが無くとも点火可能(イグナイターの起動にバッテリー電源を使う方式を除く)です。

 その後は他のカスタマイズを次々と施していたこともあり、どちらからかそうした製品が「発売されれば」くらいにしていましたが、系メインハーネスを製作した折には、近いうちにSR用に取り組もうと考えました。※結局翌冬になりました。

 SR用の「多系統ヒューズボックス対応ハーネス」製作にあたって、回路を設計しますが「系」での経験も踏まえて、かなり独自なものを考えました。
 バイクや車のメカに興味がある方ならば、「メインハーネス」と聞けば、一本にまとめられてあちこち枝分かれした「配線の束」だとわかると思います。私自身もそれに疑いなく「そういうもの」だと固定観念を持っていましたが、系では、重要な「点火系」「充電系」は独立させて、整備性(故障診断・修復)が良くトラブル(焼損など)の波及を防ぎやすくするように製作(計本)しました。
 今回はその狙いをさらに推し進めて、系統(出力側は系統ヒューズ毎+主電源・充電)で独立した「ハーネスセット」にすることを主題にしました。

 上記の主題以外の、このSR用ハーネスセットの特徴
出力系統〔イグニッション(点火)/ヘッドライト/ランプ類/メーター&アクセサリー電源〕
)ハーネスを独立させることに合わせて「アース線」を出来るだけ省略し、極力パーツ毎の近くで「ボディアース」させて積極的に車体を「マイナス線」として活用
 ※結果として各ハーネス内のアース線はごく少なくなると共に、まとめる必要も無くなります。
)各ハーネス間で連携が必要な配線(イグニッションコイル一次線~タコメーターなど)は「コネクター接続」として、各々のハーネスを単体で取り外すことが可能となり、整備性をさらに向上
)ハンドル周りのスイッチ類(メインスイッチ/左右ハンドルスイッチ/ブレーキスイッチ)のサブハーネスをフレーム側に引き込み、メインパイプ下のスペースで車体ハーネスと接続させる=ヘッドライト周辺のハーネスを少なくする
)これまでにカスタマイズで採用したパーツや回路を踏襲するとともに、接続箇所を出来るだけ減らす

 以上の点を考慮して設計・製作した物が画像①となります。
 ハーネス毎に保護チューブや保護テープで守る(全てをまとめて持つと純正ハーネスより太い)ため、狭いフレーム周りスペースで収まるか?少し心配でしたが、場所により通し方を変えたり縦に並べて固定(各部でタイラップ固定)することで、返ってきれいに収まるようになっていました。

※画像①に写るハーネスセットの内訳は、上側(奥)より以下となっています。
主電源(メインスイッチ)系ハーネス
充電系ハーネス
点火系ハーネス
ヘッドライト系ハーネス&4系統ヒューズボックス&ヘッドライトサブハーネス
一般ランプホーン(ハンドルスイッチ接続)系ハーネス
メーターアクセサリー電源系ハーネス

サイドスタンドスイッチ回路は、実際に作動させた場合(スタンドを出したままギヤを入れるとエンジン停止)再始動面倒(高圧縮エンジンのキック始動はけっこうな負担です)なため省略しました。サイドスタンド戻し忘れ防止装置は、特になくてはならない物でもない(旧車には元々無い)とは思ってはいますが、良い機会なので、後ほどスタンドバーに「ホンダ式」の加工をしてみよう考えています。

※ヘッドライト系にバルブ直前をサブハーネスを設定したのは、今後もライトユニットバルブの変更の可能性を考慮して、その際に「サブハーネス」のみ製作加工すれば良いようにするためです。

入手が可能か?心配していたイグナイター用「防水8Pカプラー」でしたが、なんとか特定出来て(防水カプラーは多種の規格が在ります)入手することが出来ました。現在使用しているPOSH製や純正イグナイター無加工で取付出来るようになりました。





バッテリー移設&周辺部品製作(前編)・Z1-R

2025-04-21
①シート下スベース(前側左サイド)
②オイルキャッチタンク
   ③バッテリーケージ
   ④ホース接続パイプ
   ⑤ベースプレート
     ⑥小物入れ
   ⑦小物入れ側面
⑧シート下スベース(右サイド)
  ⑨小物入れ(上方より)
⑩オイルキャッチタンク/ベースプレート/バッテリーケージ
 昨年、「前後18インチラジアルタイヤ仕様」へと足周り換装を施し、ハンドリングのレベルアップに高評価をいただいた「Z1-R」です。続いて「メインハーネス製作」と矢継ぎ早にカスタマイズを進めたのですが、今シーズンオフに向けてもご依頼をいただきました。

 この度のご依頼のメイン(いくつかあります)は、現在は何も無い「収納」に関しての依頼です。この車両にはPMC製リヤフェンダー(前半部)/小物入れKIT&フェンダーレスKITが装着されていますが、バッテリーケース純正のまま使う仕様となっています。その仕様で小物入れを装着してしまうと、バッテリーのメンテナンス(脱着・充電)にかなり手間がかかるので結局取り外してしまい、現状はなにも積載できない状態になっているそうです。※純正バッテリーケースはシート下スペースの最下部に位置していて、その上に小物入れが被さる配置です。後半部のフェンダー部分は下向きコの字断面で製作されているため、書類すら載せることは出来ません。
 そこで、ご依頼の内容は、「バッテリーのメンテナンスをし易く」しつつ、「収納スペース」を造ることでした。
 
 また、ご自分で「CRスペシャルキャブレターパワーフィルター仕様」に換装されていますが、クランクケースブリーザーはホース先端にフィルターを取付けただけの「大気解放」にされているため、保安基準を満たしていません。※ブローバイガス(ピストン下に吹き抜けた未燃焼ガソリン)をエンジンに再度吸入(ブローバイガス還元)させなければなりません。
 そこで、ブリーザーホースエアクリーナー(この仕様ではどれか一つのパワーフィルター)に接続することになりますが、直接接続するとガスに含まれるオイル(霧状)まで吸わせてしまいますので、途中に「オイルキャッチタンク」を設けて極力オイル分を除去することが望ましく、今回同時に製作することになりました。※エアクリーナーBOXが撤去されているので、全体の広さは充分有ります。

 結果、シート下スペース(ライダー側)には、バッテリーケースオイルキャッチタンク小物入れ3点を製作してレイアウト(そのサイドにはレギュレーター・ヒューズBOXなどの電装品を設置)することになります。
 ただ、今回の依頼の条件が「バッテリーメンテナンスがしやすいこと」ですので、どのような配置にすれば良いか?またそれぞれの取付方法(フレーム自体への加工を施さないで済めばベスト)や構造は?などけっこうな難問に挑むことになりました。
 
 フレームにはしっかりとした取付部(ネジ穴の有るステー類)が設けられているのは、「バッテリーケース」用の取付部くらいしか無い(その代わり重いバッテリーと共に電装品をも取付られているので、充分な強度はあると推測されます)という問題を含めて考えた方策が、「オイルキャッチタンクを土台」にして、その上面にベースプレートを取付け、バッテリーケース&小物入れを「乗せる」ようにすることでした。
 寸法的にも何とか収まりそうだと考えられたので、順番に製作していくことにしました。

 まずは、土台の基礎となる「オイルキャッチタンク」です。
 全てを支える役目を担うため、フレームの一部となる位の剛性強度(フレーム側がそこまで剛性は高く無いため剛性部材とはなりません)になるように作りました。これまでは、この種類(タンク・ケース類)の製作には、アルミ5052材を用いていますが、これには、アルミ7N01材を使いました。立方体になる本体部分は、mm&mm厚(天面のみ)・ステー部をmm厚板材(ステー部下側には支え補強入り)で製作しました。取付方法はラバーを介さないリジットマウントです。天面にはベースプレートを取付けるためのネジ穴(4箇所)を設けています。
 これまでに製作した物もそうですが、エンジンからブローバイガスが入ってくるIN側のパイプはタンク壁面を貫通して、反対の壁に突き当たる直前で斜めカットにして、オイル分を壁に付着させつつガスの流入の妨げないようにしています。         ※吐出側はタンク内には突き出さない直付けにして、傾ければ溜まったオイルを排出できるようになっています。

 次に、その上にバッテリーケースなどを取付けるための「ベースプレート」です。
 シート下スペースを出来るだけ有効に使うため、バッテリーを可能な限り前方寄りに配置するようにしました。そうすると、このベースプレートに相応の曲げ応力が働きます。そのため、7N01mm厚板を本体として、両サイドにmm厚板をリブ状に溶接した「下向きコの字断面」に製作しました。このプレートには後の工程で、上に乗るパーツの取付ネジ穴を開けられますが、剛性の高さと上面が平面となるため、多少ネジ穴を増やしても充分な強度となり、取付場所の微調整が出来るようになっています。
 
 ベースプレートを取付け、バッテリーを仮乗せしてみると、その高さはシート底面まであまり余裕の無い状態でした。
 当初はケース(ボックス)状にしてラバーマウント(土台部分がリジットマウントなため振動対策は必須)にして搭載予定でしたが、それでは高さが足らなくなりました。そこでバッテリーは「ベースプレートに直乗せ」(5mm厚クッション材を敷いて)として、周りを囲んだだけの「ケージ状」の「バッテリーケージ」を製作することにしました。
 周りから支えるだけで済むので強度もそれほど高くなくても良くなり、軽量化も狙って、mm厚板(それでも重いバッテリー支えるので7N01材)で本体を製作しステー部をmm厚板で囲むように取付けラバーマウントにしました。※底面が無いので、単体では浮いたように取り付けられます。
 
 バッテリーケージの形状・搭載位置が決まって、残りのスペースを埋めるように「小物入れ」を製作しました。ベースプレートへは小物入れ底にラバーグロメットを箇所設け、後部横メンバーにある純正ステー部にブラケットで支える3点支持にしています。フレームの間隔の変化やフェンダープレートの傾斜・バッテリーケージの形状にできるだけ添わせるのに、単純には展開した寸法が出せず、底面から少しずつ組み上げていく手法で製作しなければならず、簡単そうではあるものの、けっこう苦労しています。

 前側スペースの最後に、電装品の配置を考えましたが、バッテリーケージ・小物入れ共サイドが平面でその内側には少し余裕(クッション材の貼り付けなど)を取っていたので、レギュレーターをバッテリーケージ右サイドに、ヒューズボックス(多系統ヒューズ)を小物入れ左サイドに穴を開けただけで、新たなステー類を製作することなくボルト止めが出来ました。
 バッテリーの搭載位置の変更によって、バッテリーハーネスが届かなくなりましたが、取付角度と取り廻しの変更だけで再使用出来ました。

※最終的に、フレームには何も加工を施すことなく各パーツの取付が可能な仕様に仕上がりました。

 

オイルクーラー装着・SR

2025-04-03
 ①フロントマウントオイルクーラー
  ②オイルクーラーブラケット
      ③ホース接続部加工
  ④バンジョウフィッティング
      ⑤右側ホース
      ⑥左側ホース
 ⑦フロントカウルブラケット補強
  ⑧フェンダーステー追加工
⑨スロットルケーブル取り廻し変更
    ⑩ビキニカウル仕様
 SRでの初サーキット(岡山国際サーキット)走行の結果、8000rpm(現在使える最高回転数)を常用すると油温が100℃を超えることが判明しました。2025年の走行会に向けて、シーズンオフの間に「オイルクーラー」の装着に取り掛かりました。

 当店のSRへのオイルクーラーの装着となると、フレーム補強・ステアリングダンパー(横置)・エンジンシュラウドなどが邪魔をして、市販のKITでは取付けられない状態です。どこに本体を設置するにしても独自の組み合わせ(コア・ホース・フィッティング)と取付ステーの製作が必要になります。
 そこで、問題の多いエンジンの近くを避けて、フロントカウルブラケット(ヘッドライト下部)に本体を設置することにしました。※それには、オイルクーラーの必要性がごく限られた条件下でしかなく、それほど冷却能力の高くない小型のコアで充分であることも一因です。
 
 まずは、取付可能なコア(市販のKITでは取付ステーの無い本体部分、または流用可能な純正コア)を探さなければなりません。標準でオイルクーラーを装備している車種はけっこうありますが、実際のサイズを知ることはなかなか難しく、やはりデータの公表されている市販の物から選ぶことにしました。
 そして選んだのが、KITACOさんの製品で、モンキーなどのカスタム用に販売されている「スーパーオイルクーラー本体段コア)」でした。少し小さすぎるかとも思いましたが、コア本体の価格はさほど高価ではない(ホースやフィッティングの合計は結構かかります)ため、手始めとしてこちらの製品でいくことにしました。※ホース類は取付られたコアに合わせて取り廻しを考えますので、始めに用意するのは、コア本体(バンジョウボルト接続式)・SR用の取出しKIT(アクティブ製#6ホース用)・#6バンジョウフィッティングです。

 入荷前の事前準備として、最大限オイルクーラーのスベースを確保するために、フロントフェンダーをより下げる(タイヤとのクリアランスをギリギリに設定=画像⑧)ようにフェンダーステーを加工し直しました。
 また、スロットルケーブルとの干渉を避けるために下向き(後上げ)に取付けていたフロントカウルを、出来るだけ本来の真っ直ぐ向きに設定し直す(カウル下部の切除を最小限に)ために、スロットルケーブルの取り廻しの変更(画像⑨)をしておきました。※上向きに取り出していたケーブルを前向き(ブレーキレバーを挟んで上にオープン側・下にクローズ側ケーブルを配置)に変えるのですが、ライトブラケットとの無理な干渉をさせないためには、ケーブル長をシビアに選ぶ必要があり、現状の物(800mm)と100mm短い700mmのケーブルを組み合わせて、なんとか解決しました。
 もう一つは、カウルブラケットの補強(画像⑦)です。元々製作時点での剛性不足から揺れが大きく見られていたため、この機会に剛性アップをしておきました。

 キタコ製コアが入荷したところで、そのコアを見てみると、ホース接続のための雌ネジがM10-P1.25でしたので、まずは仮合わせが出来るように、#6用バンジョウボルトに合わせてM12P1.5加工しておきました。
 仮合わせ(ヘッドライトとの位置関係に考慮して)をしながらオイルクーラーブラケットを製作(画像②)しました。コアの振動対策のためのラバーマウント式(厚みが増す)は必須となるので、けっこうシビアな設定(取付ボルトは低背型)となりました。 

 コアの設置が出来たところで、ホース取り廻しを考えますが、コア側はライトブラケット内側を通すのがベストと思われましたが、下側パイプとの干渉を避けるには約10mm接続部を上げなければならなそう(パイプをその分切除する方法もありますが)でした。10mm厚カラーと長い(ダブルタイプなど)バンジョウボルトが有れば簡単だと思ったのですが、見当たらなかったので、コアのホース接続部を延長することにしました。アルミ7N01材でネジ部を製作して溶接(画像③)しています。

 ホースの取り廻しは、クランクケース取出部(オイルタンクへの圧送側)に接続した45°フィッティングから、ホースをエンジン左側のサブフレームに沿って通しオイルクーラーバンジョウフィッティングへ接続し、バンジョウフィッティングから、ホースをメインフレーム右側に沿って通し90°フィッティングでオイルタンクアダプターへ接続するようにしました。

 さて、実際の成果は本年のサーキット走行会まで発揮されることはないのですが、どの程度の冷却能力があるのかは、夏季のワインディング路で確認しようと思っています。
 この仕様で油温を適温(狙うは5~10℃ダウン)に出来るのか?楽しみです。

※オイルクーラー用メッシュホース(#6/#8)はフレキシブルとは言え、それほどの柔軟性はないため、ホースの取り廻しをしっかりと定めて、かなり正確に長さを設定することが必須です。

※シーズンを通して、ほぼ必要のないオイルクーラーですので、普段はコアを塞いで(オーバークール対策)おかなければなりません。レースの現場ではガムテープなどを直接貼っていましたが、今回は風除けプレート(純チタン2種材1mm板)を製作して、コア前面に取付けるようにしました。

 すでにバイクシーズンに突入する時期になりましたが、掲載は遅くなったものの、このオフシーズンに施したカスタマイズを引き続き紹介していこうと思います。※実際の作業とは順不同となります。

シリンダーヘッド加工・RC390

2025-02-22
     ①ポート加工
     ②INポート
     ③EXポート
     ④EXポート
     ⑤INポート
   ⑥加工前INポート
   ⑦加工前EXポート
     ⑧リークテスト
  ⑨VrⅡ加工前(ヘッド面)
    ⑩VrⅡ加工後
 ´24シーズン終盤、RC390エンジン(当店のRCに搭載)整備をしました。トラブルを起こして壊れたエンジンを修復するための整備です。せっかくなのでチューンアップをしたいとところですが、エンジン各部の強度に余裕が無さそう(トラブルの根本の原因が不明)でしたので、「シリンダーヘッド加工ポート研磨)」だけをしておくことにしました。

 設計の新しい「高回転高出力」を狙った単気筒エンジン(水冷DOHC4バルブ)だけあって、吸排気ポートはポート径は十分に広く、形状(曲がり具合・径の変化)も特に大きく変える必要はなさそうでした。ただし、けっこう鋳物肌は粗く、バルブシートのための切削加工でできた段差もかなり大きかったので、そのあたりを「なめらか」にすることを目指して削ることにしました。

 リューターでの粗削り・サンドペーパーによる仕上げと順調にポート加工を進めて、ヘッド面を磨いて完成する予定だったのですが、深刻な問題が明らかになりました。

 元々トラブルで壊れたエンジンですが、その状況は、コンロッドボルトが折れてピストンがシリンダーヘッドにぶつかり、その後コンロッドやコンロッドキャップがクランクシャフトに巻き込まれて周辺(クランクケース・シリンダーなど)を破壊されていたものでした。※大物部品は中古エンジン(1機)より部品を使用
 シリンダーヘッドには確かに打痕はあったのですが、バルブは曲がってはいたものの、めり込んた形跡もなく(バルブガイドも無事)、多少ヘッド面を磨く(ヘッドガスケットの除去を兼ねて)程度で再使用出来そうだと考えていました。
 シリンダーヘッド関連の最終作業(研磨工程では、ヘッド面に傷が入る可能性を考慮してガスケットを貼り付けた状態で研磨作業をしています)として、ヘッド面をオイルストーンで磨き始めてみれば、少々のことではその打痕が消えないことに気付きました。ようやく、その時点でただの打痕とは言えないほどの「陥没」だと判明しました。簡易的(ストレートエッジとシクネスゲージ)な測定をしてみると、最深部で0.2mm程度はありました。
 水冷エンジンのシリンダーヘッドは、燃焼室上部にウォータージャケット(冷却水の通路)が設けられていて、「ドーム状」になっていますが、軽量化冷却効率の向上のために、かなり支える部分を少なく(その分冷却水容量が増量)してあるようで、ドーム全体が押し込まれたようになったと思われます。

 けっこう深刻な状態で、対処して使うにしてもリスクを伴うことは確かなので、とりあえずは後で考えることにして、オーバーホールベース(こちらもトラブルがあるものの、クランクケース・クランクシャフト・シリンダーは使用可能)に用意した中古エンジンから外したシリンダーヘッドに同様の加工を施して、当初予定の仕様(ポート加工のみ=Vr1)としました。
 
 Vr1シリンダーヘッドを用いてエンジンを組み立て、エンジンをフレームに搭載し修理を終えました。その後、エンジンを降ろしている間に切れていた車検のための整備を施して、検査を受けておきました。※すでに冬季に入っていましたが、いつでも慣らし運転が出来るように備えておきたかったので。

 さて、後回しにしていた問題の有ったシリンダーヘッドですが、よく観てみると燃焼室全体均等に押し込まれた状態でした。バルブシート近辺もずれて(上方)いて、バルブガイドとの角度に僅かに傾きが出ていました。ただ極僅かでしたので、バルブシートカット(特殊工具ダイヤモンドシートカッターによる研磨)を施せば修正出来る程度と思われました。
 それならと、約0.2mmの「ヘッド面研磨(圧縮比UP)」と併せて行い、使えるようにすることにしました。※Vr2
 この寸法の研磨だと、いつもならば外注に出してフライス盤で削ってもらっている研磨量ですが、一気筒の小さなヘッドだということもあり、オイルストーンで一貫して削って(オイルストーンでは通常0.05mm程度までの修正をしていますので、結構しんどい作業です)しまいました。※計算では、0.2mmの面研で、圧縮比は13.0(純正=12.6:1)に変化します。

 当面は「Vr1」となりますが、少しは効果が出てくれるのか楽しみ(慣らし運転が少々つらいのですが)です。

※実はこのエンジンはお客様(Y様号)の車両に搭載されていた物です。怪我をする前年(´22)の走行会でトラブルが起こりました。部品調達に時間を要してしまい、春の繁忙期を過ぎて多少余裕のできる梅雨以降に作業を再開する予定でいましたが、その間に例の事故で怪我を負って、とてもエンジン整備が出来ないことになってしまいました。
 ちょうど、その時期には相前後して他機(空冷4st4気筒1100cc&400cc)のエンジン修理も入庫(こちらのお二方にもお待ちいただきました)していました。エンジン整備が出来そうな状態まてに回復した昨年夏頃に、順に取り掛かることにしたものの、一般整備をこなしながらではとても期間が長くなりそうでしたので、Y様には、当店のRC390のエンジンの購入・移植(当店の所有エンジンになってしまえば、順番の最後で少しづつやれば良いので)をすることに了承いただきました。比較的軽いRC390のエンジン脱着作業をこなせれたことで自信を得られて、引き続き2機のエンジン整備も、順調(苦労しながらも)に進めることが出来ました。
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