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パドックⅢ カスタマイズ計画 ブログ
油圧センサー移設・SR
2024-09-28
前回「オイルポンプ&クラッチ換装」を紹介した際の完成画像で、本来エンジン外観には何の変化も無いはずのところ、クラッチカバーに純正には無い物が付いていることに気付いた方もあったと思います。
オイルフィルターカバー隣の突起状の物ですが、 あれは「オイルプレッシャー(油圧)センサー」取付用に新設した「センサーアダプター」です。※その画像では、オイルポンプ換装による油圧変化の観察用にブラインドプラグで塞いでいます。
油圧計を装備しようと考えた際に、デリバリーパイプ(シリンダーヘッドへの外部通路)のオイルボルトを使って、センサーアダプターをネジ止めする方法ならば、エンジン本体に加工をしなくても済むと思い、デリバリーパイプ基部から油圧を検出することにしたのでした。この検出点は、オイルフィルターを通過したオイルが、クランクシャフト(~コンロッド~ピストン)系と分岐した後の、シリンダーヘッド(ロッカーアーム~カムシャフト)系へと圧送される途中となり、本来の値より低い油圧を示す地点になります。
潤滑状態を観察する目的なので、その目安となる程度の数値であれば問題無かったのですが、結果的にあまりにも低い数値にしかならず、とても状態の変化(異常の兆候)をつかむことは出来そうにありませんでした。
そのため、潤滑経路が分岐する前の段階に設置し直したい(エンジン側の加工を前提に)と思っていました。「オイルポンプ」を換装するに当たって良い機会だと思い、SRの「潤滑系統」に関して、あらためて調べてみることにしました。※通常の整備では、オイル通路内をキレイに洗浄することに気を使ってはいても、そのエンジンの潤滑経路がどうなっているのかを、調べることはありません(特有のトラブルが無ければ)でした。
ドライサンプ式のSRでは、図面上の経路(2系統の連携)を辿っていくだけでも、けっこう複雑になっています。その上、幅の狭い「縦割りクランクケース」で、クランクケース内だけではなく、クラッチカバー内にもオイル通路(オイルフィルターを含む)を設けてあり、現物の部品に置き換えて確認すると更に複雑さは増しています。オイルポンプの構造をはじめ、よく考えられたものだということが分かりました。
本題の、油圧センサーの新たな検出点として、アダプター取付のための「加工」が出来そうなポイントは、ただ一箇所だけ見つかりました。それが、クラッチカバーのオイルフィルターに隣接した場所でした。
その内部通路は、フィード側ポンプから圧送されたオイルがクランクケース内通路(約5cm)を経てクラッチカバー側に移った直後に当たります。「この通路」(画像④)から直接オイルフィルター収納部に流れ込み、フィルターを通過した直後(クランクケース側)ですぐに分岐してしまうため、候補になるのはこの点しかありませんでした。※クランクケースには、通路の外部に加工する余地はありませんでした。
加工出来そうなポイントが見つかったところで、「センサーアダプター部材」(アルミ丸棒7N01材15mm径・PT1/8ネジ・連絡通路孔3.5mm径)を製作しましたが、取付(溶接)には少し工夫が必要でした。
上記通路は通路だけが突出した形状(円筒形でおよそ2/3が突出)となっていて、その外径は製作したアダプターより小さいものでした。また、周辺の形状からその部分に直接溶接することは不可能てしたので、まずは周辺との空間を橋渡し状に溶接で盛り上げ土台(画像②③)を作り、その上にアダプター部材を溶接する手法を施しました。その後、連絡通路からクラッチカバー側に通路孔を穿孔して完成させました。※一旦ブラインドプラグで塞いで、オイルポンプ換装による油圧変化を確認したのちに、油圧センサーを移設しました。
これで、ようやく本来の油圧(フィード側潤滑系統の)を計測出来るようになりました。
実際に計測(走行)してみると、油温90℃近辺で、0.1kg/cm²(2000rpm)~0.8kg/cm²(7000rpm近辺)と表示されました。この数値であれば、油圧の変動から、「潤滑系トラブル」を察知出来そうです。
※帰路の途中で停車している際の、アイドリング(1500rpm弱)回転では、0kg/cm²を表示しました。これは、油温が高く流れやすい(吐出しやすい)状態で、送油量と吐出量がほぼ同量になって、通路の壁に掛かる圧力が極小さくなっているからです。ポンプの「エア噛み」や「故障」でオイルが送られていない状況での「0kg/cm²」とは区別が必要です。少しエンジン回転を上げて圧力値が上がれば、送油はされていると確認できます。
実際に、信号待ちの時に確認してみることがありますが、以前だとそこそこ回転を上げないと表示が変化してくれなかったので、今後は僅かなブリッピング(2000rpmまで上げれば良いので)で済むのも安心材料となりました。
オイルポンプ&クラッチ換装・SR
2024-09-14
シュラウドでの冷却強化策が一段落したところで、今夏に予定していた「オイルポンプ&クラッチ換装」に取り掛かりました。昨夏の予定で用意していた「KEDO製強化オイルポンプ」と「アドバンテージFCC製強化クラッチKIT」を、ようやく組込むことになりました。
SRのオイルポンプは、2気筒以上のエンジンで一般的な独立したアッセンブリとなった物と違い、クランクケースに直接組込まれているタイプです。SRはドライサンプ(エンジン外部にオイルを貯めるタンクを持つ)式ですので、オイルポンプはエンジン内潤滑用(フィード側ポンプ)と、主にオイルタンクへの送油用(スカベンジャー側ポンプ=ミッション系の潤滑も兼ねる)の2種類のポンプを重ね合わせたような構造となります。※ポンプの種類は一般的(4stエンジンでは)なトロコイド式です。
場所はクラッチ裏の上方(画像①)に設置されています。奥(内)側のスカベンジャー側ポンプは、右クランクケース自体をポンプボディとして収納されて、仕切りを兼ねた手前のフィード側ポンプボディとカバーが突き出された形で取付けられます。フィード側ポンプの外に突き出たシャフトにギヤが取付けられクラッチアウター内側のギヤとかみ合い駆動されています。
そこで作業はクラッチ関連部品を全て外して、オイルポンプの組み換えをすることになります。純正の状態でもあまり周辺(オイル通路を含めて)に余裕は無さそうでしたので、どのようにして強化(送油量約1.6倍らしい)されているのか?あらためて純正オイルポンプとKEDO製オイルポンプを比較してみました。
KEDO製オイルポンプはフィード側だけを強化されたものなので、スカベンジャー側は純正をそのまま使用します。フィード側の専用トロコイドを、厚く(同径で純正4mm~KEDO製6.8mm=画像②)することで、ポンプ容量を増しているようでした。※ちなみに、スカベンジャー側はやはり同径ながら、遥かに厚く13mm厚とされています。
KEDO製オイルポンプKITと純正部品を組み合わせてクランクケースに組付け、クラッチ関連を組直す際に、フリクションディスクとクラッチスプリングを「アドバンテージFCC製」に置き換えて組付ければ、換装は終了です。
これで送油量が増して潤滑不良(不足)のリスクが確実に減っているでしょうから、高回転を使った走行での心配が少なくなったと思います。※潤滑不良はポンプの送油能力だけではなく、スラッジによるストレーナー・フィルター・吐出口の詰まりや油膜切れなどからも起こりうるため、リスクが完全に無くなることはありません。
組み終わってしまえば、エンジンの外観はなんら変わらず、送油量の変化(潤滑状態)も走って感じ取れるものではないのですが、油圧にはなんらかの変化は現れるのかもしれないと、次の走行機会にチェックしてみました。
油温の低い暖機運転(アイドリング回転)の間から、油圧はこれまでより高目(0.2~0.3kg/cm²)に表示されていて、時折回転を上げると、上がり幅はさらに大きくなっていました。走り出して油温の上昇とともにオイル粘度が下がってきても、徐々に圧力は低くなるものの換装前より確実に高い数値を示していました。
本格的な運転状態(油温90℃近辺)では、低回転(3000rpm以下)では相変わらず0kg/cm²を示しますが、回転を上げた際の圧力上昇の度合いが大きくなり、0.5kg/cm²くらいまでに高くなっているのが確認出来ました。※純正では高くても0.3kg/cm²でした。
これ位の圧力アップを確認しつつ走行出来れば、安心感は高まり、より集中して走れそうです。
加えて、もう一つ思わぬ効果があったのが確認できて、うれしい収穫となりました。
前段で、本格的な運転状態を油温90℃近辺と書きましたが、油温・シリンダー温度共にオイルポンプ換装前(油温95℃/シリンダー温度90℃前後)ほど上がらなかったのでした。一回の結果では気象条件の違い(当日は薄曇り)も考えられるため、もう一度走行機会を持って確かめたところ、天候:晴れ(日差し強い)・外気温30℃の状況で、シリンダー温度85℃/油温92℃という結果となりました。
本来エンジンオイルには「冷却効果」があり、エンジン内部部品から熱を奪う役目を果たしているのですが、いくらか多くのオイルが供給されても、オイル自体を冷やさなければ(オイルクーラーなど)油温はさらに上がってしまうか、あまり変わらない程度の温度になるのではないかと考えていました。
実際には、送油量の増したオイルがエンジン温度を下げ、冷やされたエンジンがオイルを冷却するというような好循環が起こったのではないかと思われます。
これまで「ビッグフィン加工」「シュラウド装着」で、なかなか達成出来ずにいた冷却策の目標(シリンダー温度80~85℃/油温90~95℃=外気温30℃超時)がギリギリではあるものの、この「強化オイルポンプ」の効果を加えたことで、予想外に達成することが出来ました。
目的であった安定した潤滑性能と共に冷却効果も得られて、期待以上の「オイルポンプ換装」となりました。
シリンダー温度80℃台をキープ出来るようになって、炎天下でもタレる様子は全く無く、パフォーマンスを維持できるようになってくれました。(人間がタレて限界が来ます)
※シュラウドでの冷却強化策で目標に達することが出来なかったので、次にはオイルクーラーの装着案も考えていましたが、その必要が無くなりました。(オイルクーラーの機能美は魅力なのですが)
※強化クラッチに関しては、切れ・つながり共に若干良く(シャープに)なった(純正の新品との比較ではありません)ようです。スプリングは硬くはなっているものの、ZETA製レバーKITに換えていることもあって、それほど重くは感じない程度でした。
シュラウド追加装備・SR
2024-09-01
前回オフシーズンに施した「カウリング仕様」を掲載しましたが、こちらは本格的な猛暑を見据えて梅雨時におこなった「シュラウド」の仕様変更です。
今回のアイデアは一昨年の夏にシュラウドのテストをしたのちに、次の方策として考えていたものでしたが昨年は出来ずじまいでしたので、今年は是非ともやっておきたいと思っていました。
それは、シュラウドの後端にさらに角度を付けた「ガイドプレート」を追加すれば、シュラウド内の流れを良く出来るのではないか?というアイデアでした。
アルミ板を追加溶接したり新たな仕様で製作するのも手間がかかるので、ネジ止めの「貼付式」にしました。貼り合わせるとなると、出来るだけ薄くなければならないため、チタン板材(純チタン2種1mm厚)で追加部分を製作しました。
また。事情があってしばらくは乗れなくなったRC390から、ステアリングダンパー(ハイパープロ製)を移植して横置タイプ(画像④)に変更しました。これで、ステアリングダンパー(縦置き)のためにえぐった部分も必要が無くなるので、同じくチタン板で塞ぐようにしておきました。
さてその効果はあるのか?と7月以降テストしてみましたが、少しは役には立っているようでした。直接比較ではないためはっきりとはしませんが、2回の走行機会(現地の気温30℃前後でシリンダー温度が89~90℃)の傾向から、わずかながら(1℃程度)も冷却効果が上がったのではないかと捉えています。
冷却効果は大きくはありませんでしたが、はっきりと体感出来たことがありました。走行中(特に60km/h以上)右脚(膝下付近)に熱風を受けて熱さを感じるようになったことです。まるでフルカウリング車に乗っているかのようで、SRに乗り始めて初めてのことでした。このことからも「整流効果」としては確かに有ったのだと実感しました。※左右非対称のシュラウドなため、左側は方向が違い直接は脚に当たらないようです。あまり熱さを感じないブーツに当たっているかもしれませんが。
シュラウドとしての冷却効果を上げる策は、これ以上はより大型化しかないと思われます。目標(シリンダー温85℃以下/油温95℃以下=外気温30℃超時)には達しませんでしたが、それなりの成果を得られたので、一旦は完了にしようと思います。
※単純に、今以上の大型化はルックス的にNGだからです。後ほどには、一体型の物に作り直そうとは考えています。
カウリング装着・SR
2024-08-22
シーズン突入の際に急遽始めた「キックペダルの実験」を報告したために、紹介が後回しになっていましたが、SRはこのオフシーズンに予定していた通りに、「カウリング仕様」へのカスタマイズを終えていました。
「カウリング仕様」への仕様変更のために用意していたのは、「ガルクラフト製ビキニカウル BULLET TYPE-R」と周辺部品では「デジタルスピードメーター(メーカー不詳)」「ディトナ製セパレートハンドル」「ディトナ製150mm径ヘッドライト」です。カウリングの装着には各々が関連するので、優先順位はあるものの連続して作業しています。
最終的に選んだのは、通常ではフロントフォーク(またはステアリングステムなど)に取付けられたヘッドライトにかぶせる「ビキニカウル」でしたが、実は今回のカウリング仕様の「一番の目的」はヘッドライトなどの重量物の「フレームマウント化」でした。
自身のRC390やお客様のカウリング車などから乗り換えた際には、常々フロント周りに違和感を感じていました。フロントタイヤが内に向いて切れてくると、そのまま切れ続けるような重さがハンドルに伝わってくるため、少し「当て舵」をして止めているような感覚でした。
長年ロードレース(GP250)を続けてきた経験からも、フロント周りの動きに余計な重さが加わるのが邪魔に感じていて、何らかの形(カウリング装着に拘わらず)でフレームマウント化に向かおうとは考えていました。
カウリング装着は、多少の「空力性能の向上」を望むようになってきたのが、良いきっかけとなりました。
カウリングを選ぶ際には「空力」がそれほどは重要ではないので「カウルレス仕様」にも簡単に出来るように「ビキニカウル」を選びました。ただ、小振りなビキニカウルをフレームマウントにする場合は、ハンドル周りのパーツとの干渉を避けるのはかなり難しくなり、必ずしも良いスタイルになるとは限らない(優先順位は下位)ため、ある程度は妥協も必要だと覚悟して作業に取り掛かりました。
作業(1)
前述した「優先順位」ですが、当然一位は「ハンドルポジション」です。特に右肩の負傷の影響の残る現状では、通常時よりも重要となりそのポジション設定を真っ先に決めました。負傷することを前提としてはいなかったものの、「タレ角可変」のディトナ製を用意していたのが幸いしました。元々タレ角が小さめのポジションを試す目的でしたが、色々なタレ角・絞り角に変化させてみると、想定した目的に近い「タレ角」はごく小さく(2~3°)「絞り角」もかなり開いたものが、肩の痛みが少なくすみ、ライディングへの支障を最小限に出来そうなポジションとなりました。
作業(2)
上記ハンドルレイアウトを基準に「カウリングブラケット」の製作にかかりました。
フレーム側はヘッドパイプ前側の上下2ヶ所(60mmピッチ)にM8ボス(炭素鋼S50C)を溶接して支持部としました。この配置だとブラケットの支持部材が角パイプ1本となり強度に不安はあるものの、それも実験だと考えてこの構成で製作することにしました。
ブラケット本体は、アルミ7N01材20mm×20mmの角パイプを主体に組んでいます。ヘッドライトはディトナ製で決まっているものの、メーター配置は汎用性を持たせて3ヶ所にネジ穴(中央=M8/両端=M6)を設定しておきました。
ひと通り組み上げて(画像③)フレームに取付けて各方向に力を加えてみると、「しなり」がけっこう出ていたので、支持部に補強を入れることで強度を増しています。
干渉を避けつつ出来るだけスタイルも良くなる位置設定は、やはりかなりシビアでブラケット全体を下げるプレートを追加したり、ビキニカウルの取付をライトケースとは共用しない位置にずらしながら、なんとか妥協点としました。
作業(3)
最後に、以前から整理したかった「配置換え」を兼ねて、「メーターパネル」を製作しました。
メーターの配列は、レトロ風なアナログ式タコメーターと現代風のデジタルメーター(スピード&インジケータ/電圧/油圧/油温/シリンダー温)の双方に分けることで、それぞれの雰囲気を妨げないレイアウトを考えました。
タコメーター(ディトナ製)は同社のステー(ラバーマウント式)を使用して、単独でカウリングブラケットのセンターに取付けることにして、他のメーターはトップブリッジ側に新たにメーターパネルを製作して配置することにしました。※スピード&インジケータはラバーマウントとして、メーターパネル自体がトップブリッジにラバーマウントされているのと併せた振動対策としています。
追加作業
1)ハンドル周りの軽量化をさらに進めるため、バックミラーをライトステーに取付けるようにしました。これまで使っていたミラー(ハンドルマウント用スチール製)でも取付可能にしましたが、ブラケットへの負荷を考慮して出来るだけ軽量な物(樹脂ボディ・アルミ製アーム=メーカー不詳)をとりあえず選んでおいて試すことにしました。
2)ヘッドライトケースが前方に移動したため、ハーネスの長さが足りなくなり応急的にケース外にまとめましたが、各デジタルメーター接続用に「分岐を繰り返していた配線」を4分岐端子を使って不要な配線を省いておきました。(ハーネスはいずれかの機会に作り替える予定です)
※トップブリッジ側にマウントしたメーターレイアウトは、今回の目的のハンドル周りの軽量化にはそぐわないのですが、メーター自体が軽量なことと、メインスイッチを取り囲む配置としたことで、慣性重量としては小さいだろうと判断した結果です。
※勘違いしていたのですが、「ガルクラフト製ビキニカウル」は、純正ヘッドライト(180mm径)に装着出来る設計でした。ヘッドライトの覗く穴が約150mmだったため、小径のライトが必要だと思い込んでいました。設計では、そのまま被せて小さく見せるようになっていて、そのためにライト前方の張り出しを長くして純正ライトのまま、あのデザインが可能にされていました。斬新な発想に感心いたしました。
ただ、結果的には小径ライトにしていたが幸いして、本来の取付位置からカウリングを後退(カウル本体も少加工)させることが出来て、少しはスタイルを整えるのに役立ちました。
実験・キックペダルⅢ・SR
2024-08-03
2本のキックペダル(オールアルミ7N01材製)の製作・実験をした結果、「アーム長の適正値(1本目の長さ付近)」を得られたと同時に早々に「強度不足」部分も明らかになってくれました。
発覚した直後には、軸受部の強度を考えると、もはやアルミ材では無理か?と直感しました。ただ、その後にいくらかの考えを巡らすと対応策が浮かんできたので、アルミ材3作目の製作をして実験を進めることにしてしました。
その対応策では、キックアーム本体だけではなく「キッククランクボス加工」と、「ストッパー部の別体化」を施すものです。※「アルミ製キックペダル」にこだわった方策です。その対応策は以下の通りです。
1:軸受部の強化策は、キッククランクボスとの「嵌合長」が純正(16.5mm)のままでは限界(軸受部外周はすでにクラッチカバーに干渉するぎりぎりに設定)近いので、嵌合長を長くしてみることにしました。
ボスの軸部を継ぎ足す手法(純正ボスから切除)で、ピボットシャフトやブレーキペダルなどと干渉しない限界までの長さに延長した結果、嵌合長を30mmに設定できました。※アーム根元の溶接強度優先のため偏心させていた軸受孔も中心に戻したことと併せて強度は2倍程度
2:ストッパー部に関しては、ストッパー自体を「TC4チタン合金(通称64チタン)4mm厚板材」で製作して貼り付け(ネジ止め)式に変更(オールアルミ製ではなくなりました)しました。そのうえで、そのストッパーを支える部分が広範囲になるように、可能な限り広げました。※特に高さを8mm(純正寸法)から11mmへ拡大しています。
3:アーム根元(ネジレ・曲がり)強化を図るため、上記のストッパー支え部を延長してアームの補強を兼ねるようにしました。キックバーの根元には追加溶接して、溶接盛りを大きくさせて補強としておきました。
以上となりますが、今回は総じて周辺へのクリアランスを干渉しないギリギリにするために、大きくしておいてから実際に干渉した部分を削り落とす手法で製作しました。見た目にゴツイ感じになったとともに重量も増えましたが、それでもまだ少しは軽量化にはなっています。
チタン合金材の入手までに時間が掛かったため、実際に実験(キック始動)出来るようになるまでに、前作から2ヶ月ほども経ってしまいました。その間、5月下旬に乗って以来エンジンも動かしていませんでした。
通常この程度の間が空いた場合は、キャブレター内のガソリンを排出してフレッシュな燃料にするところですが、今回はあえて排出せず(エンジンが掛かりにくい状態=20~30回はキックしたいので)に、キック始動に挑むことにしました。さて結果は?
キックを始めると、案の定掛かりそうで掛からない状態が続いてくれました。踏みごたえは良くしっかりとした感覚が続いていたので、休むことなく20回程度キックしたら始動に至りました。
目標の20回はキック出来たので、エンジンが少し暖まった頃を見計らって停止して、キックペダルを外して各部を確認しました。現状では、ストッパーは一筋の痕も無く板材ごと押し込まれてもいない状態で、全く問題は無いようです。軸受孔も今のところは開いた様子は見られませんでした。※画像⑥~⑧
それなりには強度を上げられたようなので、当面は実際に使っていこうと思います。ただ、軸受け部は強度を2倍程度に上げたとはいえ充分とは考えてはいませんから、随時経過を観ていくつもりです。
※3作目とはなりますが、アーム部からバーまでは1作目の物を切除して再利用(2回しかキックしていないので、ほぼ無傷)しています。加工性が良く溶接強度の高い「アルミ7N01材」ならではのメリットです。アルミ材のもう一つのメリットである「軽量化」に関しては、キッククランクボス(鋳鉄製)を含めた重量が850g(WM製+純正ボス)から590g(8/4訂正)になっています。
※当初の目的のクランキングの勢いを増すことですが、感覚的に例えると、純正やWM製が「ドッドッ」ならば、今作では「ドドッ」となったよう感じです。※エンジンが掛からなかった場合ですが、あくまでも私的な感覚です。
ノーマルをはじめ他のSRでも使用可能ですので、試してみてもらおうと考えています。
※今作ではキッククランクボスまで加工しましたので、お客様にはとてもお勧めは出来ないものとなってしまいました。当店のメニュー化も見据えて、「他の素材」で製作するように準備を進めています。