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カスタマイズについて

 パドックⅢでは、豊富なレース活動で得た経験を元に、その知識と技術を傾注して、お客様のご要望に最適なカスタマイズとなるように取り組んでいます。
 また、走行性能に限らず、安全性能や環境性能・保安基準などを含めた取組みで、安心してお乗りいただけるバイク作りを目指しています。

パドックⅢ カスタマイズ計画 ブログ

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SRトラブル対処・Ⅱ

2021-08-29
①クラッチカバー補修
②キックペダル加工
 SRトラブル対処・二つ目は、キックペダルによるクラッチカバー破損の補修です。
 通常(本来の組立状態)では起こらないトラブルですが、湾曲キックペダル(固定式ステップの外へ回避した形状)の採用によって、踏み下ろしにくくなっているため、少しでも始動しやすいことを優先して、あえてリスクを承知でクラッチカバーと干渉してしまう位置にペダルを組付けた結果です。

 湾曲キックペダルは、折りたたむと湾曲部分がクラッチカバーに近づいてしまうため、純正ペダル(ストレートに近い形状)に対してキックシャフトの後(回転方向にスプライン山2山程度)にずらして組まなければなりません。ただでさえエンジンより離れた軌跡(ステップバーの外)で踏み込むことで、踏力が回転方向に変換されにくく(分力)なっている上に、踏み込み始めの位置が低くなってしまうと、更にキック始動が困難になってしまいます。エンジンを高圧縮化しているため、よりしっかりと踏み込めるペダル(純正より少し長くストレートな)が欲しいくらいですから、少しでも始動性を下げないようにスプライン1山ずらしの位置に設定していました。わずかにクラッチカバーに干渉することになりますが、多少のリスクは覚悟して、保護テープを貼って傷つき防止だけはしていました。

 ただ、想像以上に振動による影響は大きかったようで、徐々にクラッチカバーの干渉部が陥没していき、気づけば亀裂が入りオイルがにじみ出ていました。その力はほとんど「打撃」と言っても良いくらいです。少し甘くみていたと思い、補修にかかりました。

 クラッチカバーの陥没部を亀裂ごと溶接して盛り上げて、研削して表面を仕上げました。キックペダルは本来ならば組み直すべきなのですが、やはり踏み込みにくくなるのは避けたいと思い、ペダルを加工(干渉部分の削除)することにしました。もちろん、強度に影響を及ぼすような加工になるため、自己責任で行うことです。とは言え、最大踏力が加わる方向応力を考えて削りました。その辺りも自らの車両でならテストすることが出来ます。

※パフォーマンスダンパーの装着によって、車体や人間に伝わる振動はずいぶんと軽減されていますが、エンジンの振動そのものは変わりませんから、エンジン本体に直接取り付けられている物(マフラー・キックペダルなど)については多大な振動が発生しているままで、軽減されることはありません。

SRトラブル対処・Ⅰ

2021-08-22
①脱落防止(2種)
②1.5mm径/1.0mm径
③専用スリーブ
④専用カシメ工具
 振動の大きいSRでは、振動から発生するトラブルは多く、その振動対策トラブル対処法も頭を悩ませるところです。
 「フルLED化」した際の電装品への振動対策(補修を含めて)は、今のところ功を奏していて断裂などのトラブルは発生していない状況です。※引き続き経過観察します。

 この度の、対処ひとつ目は、エキゾーストパイプ(マフラー)の「脱落防止」です。新作したテールパイプのテスト段階で、フロントエキゾーストパイプにクラック(割れ)が生じた際に、仮にそのまま完全に折損した場合には脱落してしまう恐れがありました。その際のクラック発生原因は、マフラースプリングを装着しなかったことに起因していると思われたので、スプリング装着加工とクラック補修・補強(溶接)をして対処としました。追加の振動対策は施さずに、その後経過を観ていましたが、クラック発生は見られないようです。

 もともと「振動対策」として、サイレンサー部での「ラバーマウント1点支持」としていますが、更に中間近辺も含めた「ラバーマウント2点支持」が良いのか?悩ましいところで様子を見ていました。以前(ステンレス製パイプ)にも「2点支持」は試みましたが、その中間ステー部が折損しましたので、必ずしも「2点支持」が有効ではないと思い「1点支持」としていました。※1点支持の欠点は振幅幅が大きいことです。もう少しこのまま経過観察をしていこうと思いますが、「脱落」の危険性は感じましたので、「脱落防止」だけはしておくことにしました。

 手始めに、レースで義務付けられるドレンボルトなどの「ワイヤーロック」に用いられる「ステンレスワイヤー」(1本物)を使ってみましたが、あっという間に切れてしまいました。テンションを掛けないようにしたり、太さを変えてみたりしてみましたが、いずれも効果はありませんでした。
 かなり「柔軟性」と「靭性=じん性」が必要そうなので、自動車業界以外を含めて探したところ、ステンレス製「ワイヤーロープ」(ワイヤーケーブルとも呼ぶようです)を見つけました。極細のワイヤーをより合わせてロープ状(クラッチケーブルなどと同じ)にしたものなので、けっこう切れにくいのではないかと思われ、1.0mm1.5mm径の2種類用意してそれぞれ試すことにしました。

 1.5mmのワイヤーロープは、カートリッジ式オイルフィルターのワイヤーロックをする際の方法と同様に、EXパイプにステンレスバンドを直接締め付けてバンド金具部とフレームを連結するようにしました。1.0mmの方はEXパイプをゆるやかに取り囲んだだけにしておきました。フレーム側は双方ともに、ゴムチューブを通して傷付き防止とし、中間部分には最大振幅でもテンションが掛からないようにしています。※ワイヤーロープの締結には、専用の金具(スリーブ)と工具が必要でした。

 この処置をして以来、数回走行しましたが、現状ではどちらも断裂することはなく、「脱落防止」として機能しています。特に1.5mmはかなり強靭そうですので、少しテンションが掛かっても大丈夫かもしれません。やり方によっては「振動対策」としても応用できる可能性もあり、その方法も考えようと思います。

ガンマ500レーサー仕様変更

2021-08-13
①YZRタイプシートカウル
②リヤEXチャンバー レイアウト変更
③仕様変更シートレール
④Fカウルステー延長
 2018年に製作した「セミオリジナルアルミフレーム」(ワンオフパーツ作品集に掲載)の、ガンマ500レーサー(RG500γ市販車改)が久し振りに入庫しました。
 もともと関東の方ですが、当時はちょうど鳥取県に赴任されていて、関西の共通の知人の紹介で来店されるようになりました。各部の仕様変更などの依頼を受け、マシン製作のお手伝いをさせていただいていました。その過程で当店の「オリジナルフレームRS250」を見られて、それまで抱えられていた問題点の解決策として、フレーム製作の決断をされました。そうして完成したのが、前述のアルミフレームです。完成後まもなくして、また関東へ転勤されましたので、久し振りの再会となりました。

 この度は、当初のRG500γ(スズキワークス)タイプ外装を、ヤマハYZR500タイプシートカウル・ホンダRS250流用フロントカウルに変更するための、シートレールフロントカウルステー仕様変更のご依頼で入庫いたしました。事前に来県されるスケジュールを確認するものの、具体的な作業は入庫してから考案しなければならず、滞在期間も限られているため少し不安な面もありました。

 来県前にシートカウル仮合わせが出来るように、シートカウルとシートレールの予備加工(干渉部分の切除)は施されていました。入庫の際に仕様変更の確認をすると、YZRタイプのシートカウルでは、後方シリンダーのエキゾーストチャンバー出口(サイレンサー)がほぼ横並びに寄せられたデザインとなっています。EXチャンバーを通常より捻って(R=時計回り/L=反時計回り)取付けると、その配置が可能になるようですが、その状態ではEXチャンバーのタイコ部がシートレール下側を支えるパイプに干渉していたようです。そのため、シートレール下側の再構築EXチャンバー取付部の移設(または新設)が、この度の作業となりました。フロントカウルステーは延長が必要なようで、出来るだけカウリング側の加工やフィッティング(取付は差込式)がし易いように考えることにしました。

 シートレール下側は、左右タイコ部の間がかなり狭まっているため、左右1本づつのパイプでは大きく湾曲してしまい剛性が落ちてしまうと思われました。そこで、1本の長方形断面(45×20)の角パイプ(アルミ7N01材)を、タイコ部下面まで設置した上で、その先端に20×20角パイプを接続する「変形Y字構成」(側方から見て「く」の字)としました。長方形角パイプの下端には丸パイプを溶接して、角度を付けたY字の接合部の強度を上げるようにしています。※画像③ EXチャンバー取付部は元の物を切除し位置を変えて取付け(右は元左の物を移植・左は新作)ました。

 フロントカウルステーはカウリング側の加工が少なくなるように考えると、カウリング前面の直角に交わる点に向けて、現状の先端部から上向きに角度を付けたうえで約50mm延長する必要があるようです。ただアンダーカウルを含めたフィッティングまで検証することが出来ない(カウリング本体も加工途中)ので、少し自由度を持たせるようにしました。フィッティングにはホンダ純正ナット式カウルボスを使って差込式にしているので、これに合わせた丸パイプ(外径17mm/内径14mm)を更に太い丸パイプ(外径20mm/内径17mm)への差込式として、短め(内部長約20mm)にした20mm径のパイプのみ溶接して固定しておきました。パイプの差込長さ(深さ)が調節可能となった上、ボスとパイプのどちらの差込部でも、カウリング脱着に使用しやすい方を選択出来るようにしました。※画像④

※溶接して接合した金属製品(特にアルミ材)は、部分的に切除した場合でもきれいに研磨すれば、ほぼ痕跡が分からなくなり再加工を出来るようになります。アルミ(7N01材や5052材)であれば、溶接強度の高い溶接棒を用いて溶接した物なら、強度にもそれほど影響はありません。溶接歪みは1回目よりは大きくなりますので、部材のサイズやに溶接箇所によって注意する必要があります。※チタン材は強度に影響が出ます。

粘度セッティング・Ⅱ

2021-08-07
   ①5W-40(MOTUL 300V)
         ②15W-50
 真夏に向かって柔らか目(15W-50から5W-40)へエンジンオイル粘度を変更するにという、通常(常識的な)とは逆のパターンで試すことにした粘度セッティングですが、エンジン冷間時の変化もさることながら、温間(完全に暖まってシリンダー温度・油温ともに適正になった状態)から過熱気味の状態におけるテストが出来ると考えられ、かえって良いテストになると思います。
 やはりオイルにとって最も重要なのはエンジンを「保護」(多少の過負荷や過熱気味の状態でも)し、エンジンパフォーマンスを「発揮維持」することなのは間違いありません。高い気温の中での温間時の影響(悪影響を踏まえ)を確認しつつ、走行全般において粘度セッティングのテストをしていきます。※最終的には冬季(低気温)に至るまで経過観察を続けていきます。

 常温とは言え気温25℃位になると、15Wのオイルでも少しは柔らかくなりますが、やはり「5W」のオイルは格段に柔らかく、エンジン(SRはフレーム内オイルタンク)に注ぐ際には、かなり水っぽく「サラサラ」に感じます。注入後に一度エンジンを回し、エンジン内のオイルを完全に入れ替えて、後日のエンジン始動からのテスト開始に備えました。

 外気温約30℃(午前11時・屋内)で始動準備に入ると、確かにキックの手応え(足応え)は軽くなっていました。特にデコンプレバー(EXバルブを開いて圧縮を逃がす機構)を引いて空キックをしていると、軽くエンジンを回せるのが良く分かります。ピストンの頭出し後の、始動のためのキック動作でも若干軽く感じられますが、柔らかいオイルの影響だけではなく、圧縮低下の影響もあるかもしれません。梅雨も明けてほぼ同様の気象条件で数回始動を試みましたが、なかなかエンジンが掛からない(キック10回位)こともあれば、キック一発で掛かってしまうこともありました。ただ、なかなか掛からない場合には、キック数回に1回は「ケッチン」が起こりますが、その反動の強さが少し軽減されているようです。始動性が良くなっているとは言えないものの、すこしは痛みが減ってホッとしました。※始動(キック)時には必ずレーシングブーツを履いています。それでも結構痛いので。

 アイドリングで数分エンジンを掛けて(暖機運転)おいて、シリンダーが熱くなったのを確認して発進しますが、その段階でも油温は50℃位にしか上がってない状態です。走り出すとエンジンのレスポンスが軽く、「まるで」完全に暖まっているみたいに感じます。これまでは油温のチェックは過熱していないか?どうかを管理していたので、あまり負荷の掛からない状況では気にしていませんでしたが、3000rpm前後で約20km走行しても、油温は80℃に達していません(78~79℃)でした。(油温は80~110℃が適正範囲)この状況なら柔らかい5Wのオイルのおかげで、エンジンがスムーズで断然調子が良く感じ、効果的だと思います。※完全に暖まった状態ではないので、この段階で急に高負荷を掛けるのは厳禁です。

 徐々にエンジン回転を上げて走り出すと、たちまち油温は90℃を超えた適正範囲に入ります。この状況では特にこれまで(15W-50)との違いは感じ取れませんでした。30分程度走り込むと最終的に100℃に初めて達しましたが、熱ダレした様子は無く、エンジン性能的には悪影響が無さそうです。※エンジン保護(潤滑)の観点においては、シーズンオフに分解して検証します。

 この度のテストで改めて分かりましたが、外気温30℃超でこの油温変動ですから、一般的な走行では油温は「適正範囲まで上がらない」まま走り続けていることになります。よほど油温の上昇し易いエンジンや、高温下で高負荷が掛かる使い方でない限り「5W-40」のオイルは効果的だと思います。気温が低くなっていくと更に効果は大きくなると思われます。

 今後は、オイル消費量汚れ(燃焼ガスの吹き抜けによるオイル燃え)への影響を検証していきます。実際のシリンダー温度と油温との関係も明らかに出来れば尚良いと思われ、シリンダー温度を測定することも考えようと思います。(水冷エンジン車なら簡単なのですが)

※エンジンによっては、粘度の違いでシフトフィーリングが結構変わるものもあります。また、当然オイルの種類によっても効果は違ってきますので、ご注意ください。

粘度(エンジンオイル)セッティング

2021-07-23
   ①5W-40(MOTUL 300V)
   ②冷却フィン付フィルターカバー
 エンジンオイルに、10W-30(粘度指数)などの「マルチグレード」(高温時の粘度維持と低温時における流動性を両立)のオイルが登場して,すでに数十年経ちます。もはや当たり前になりましたが、近年ではどんどんとワイド化して10W-505W-40などが販売されるようになりました。エンジンオイルとしての基本性能を確保した上で、それぞれのエンジンと使用条件に適した粘度セッティング出来る幅も広がることになっています。※基本性能の内、摩擦低減(減摩作用)に最も重要な油膜の強さは、粘度とはあまり関係ありません。高温時に「極端」にサラサラになってしまうと、油膜保持力にも影響が出るようですが。

 近頃、スーパースポーツ車(近年の)でも、柔らか目(5W-30/0W-20など)を好んで使う方もいらっしゃるようですが、当店では使っていません。高温側の指数が「40以上」のオイルを使っています。問題となるのは高温時の粘度維持です。サラサラのオイルでフリクション(抵抗)が少なくエンジンが軽く回るのが良いと思われているのかもしれませんが、たとえ良質のオイルで油膜はしっかりしていると仮定しても、オイルの「密封作用」が低下して圧縮漏れや燃焼ガスの吹抜けが起こりやすくなる恐れがあります。圧縮漏れが顕著になると、圧縮させるための抵抗が減って更に軽く回るように感じてしまいます。また、あまりサラサラになってしまうと油圧が低下して、潤滑通路内の狭い隙間やオイルジェット(吐出穴)に押し込めなくなり、必要箇所に行き渡らなくなる可能性もあります。このような理由から、指数40以上を使用しています。

 当店では一般に、空冷エンジンや旧車系・鉄製シリンダースリーブのエンジンなど、各部クリアランスの大き目(特にピストンクリアランスの)の車種に、10W-4015W-50の範囲を、クリアランス小さ目の、近代の水冷エンジンやアルミメッキシリンダーのエンジンに、5W-4010W-50の範囲でチョイス・ブレンドして使っていただいています。

 ただ最近、少し変わった理由から、旧車の空冷エンジン車に「5W-40」のオイルを試すことが重なりました。エンジンの始動性や始動直後の冷間時(適温になるまで)のエンジン特性の向上を狙ったものでした。これまでは密封性を上げて爆発しやすくすることを重視していましたが、冷間でも軽くなめらかに回りやすくことで、始動のしやすさ(回しやすさ)始動直後のアイドリング安定化暖機運転の時間短縮などへの効果を期待して試してみました。そして、その効果は確かに(劇的とは言いませんが)有りました。密封性が若干落ちるものの、爆発出来る位の良いコンディションのエンジンであれば、5W(低温指数)程度のオイルでも場合によっては有効かもしれないと思いました。

 そこで、当店のSRでも試してみることにしました。エンジンをチューンアップして以来、「MOTUL 300V-ファクトリー 15W-50」を使ってきましたが、「5W-40」を使って、どのような変化があるのか?テストしていこうと思います。(望ましいのは始動性の向上や「ケッチン」の低減ですが、実際にはどうなるでしょうか?)

 ついでのカスタマイズで、オイルフィルターの交換に伴って、フィルターカバー冷却フィン付きの物(画像②)に変更しました。少しはオイルの冷却に効果があるかもしれません。(?)

※1.当店のSRは、オイルクーラーは装備していませんが、油温管理はしています。夏季(30℃超)でも、油温が100℃を上回ることは無いのを確認していますので、高温指数が40でも大丈夫だろうという前提です。油温が100℃超高負荷を掛け続けるような場合では、やはり「高温指数50」のオイルが望ましいと思います。

※2.高温側粘度指数は粘度そのものを表したものではありません。どんなオイルでも、高温になるほど粘度が低下してサラサラに近くなっていきますが、その低下の度合いを表していて、高い指数ほど低下が少なく粘度を維持出来ると考えて良いと思います。

※3.オイルの基本作用には、減摩(摩擦低減)作用・緩衝作用・密封作用・冷却作用・清浄作用・防錆作用などがあります。
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