カスタマイズ事例
RD500LC
この車両は、当時より新車で購入されて(当店創業前)、フルノーマルのまま大事に乗られていた、ヨーロッパ仕様RD500LC(日本名RZV500R)です。創業前からの知人でもあり、開業以来当店においでいただくようになりました。タイヤ卸販社(B社)にお勤めだったこともあり、当店のレース活動への多大な応援もいただいていました。当店がそのレース活動で得たノウハウを基に、本格的にカスタマイズに注力するのを見られて、ご自身のRDへのカスタマイズを決意されました。
RD500LC(RZV500)は、「2ストローク・2軸クランクV型4気筒」という、GP500レーシングマシン並みのエンジンが搭載された唯一の存在です。このエンジンに惚れ込んだオーナーさんですが、その反面、ハンドリングには不満を抱いておられました。´80年代初頭に見られる、スポーツ(レーサーレプリカ)系バイクの定番である、フロント16インチバイアスタイヤを採用しているものの、そのハンドリングははっきり言って、「鈍い・重い」とてもスポーツとは呼べないものでした。※16インチバイアスのフロントタイヤ(リヤは18インチ)は技術革新の途上であり、クイック過ぎたり切れ込みが起きるなど、バランスがシビアで難しいものでした。
このハンドリングを改善して、エンジンの魅力を引き出したマシンにしたいとカスタマイズの依頼をされました。また、当時(2002年頃)でも、すでに20年近く経過しており、以降も長く乗り続けるための、エンジンのオーバーホールとチューンアップも併せてご依頼をうけました。
車体構成は、前後17インチラジアルタイヤ(B社)/ワイドホイールへの換装を中心として、フレーム/足周りの剛性アップ・アライメント変更・前後サスペンション高性能化を施し、スーパースポーツにふさわしいハンドリングを目指しました。エンジン関連では、大幅なパワーアップを狙うチューンアップも検討しましたが、希少な輸出仕様RD(フルパワー=88ps)ということもあり、控え目なチューンアップにとどめてオーバーホールによって以降も長く乗り続けるためのメニューとすることになりました。
カスタマイズ仕様
◆フレーム=●輸出仕様(角断面鋼管ダブルクレードル・サイドパイプ式)ベース
●各部補強(ヘッドパイプ・ピボット部周辺)
●サンドブラスト&ペイント(ハードクリア塗装仕上げ)
◆フロントサスペンション=フロント車高&フォークオフセット変更(キャスター角/トレール量)
●フロントフォーク=BEET製ZRX400-NK4レース用倒立フォークKIT
※ZXR400用加工品(カートリッジ式フルアジャストタイプ)
●ステアリングステム&トップブリッジ=ZXR400用流用
◆リヤサスペンション=RD/RZV独自のリヤショックアブソーバーエンジン下側マウント方式(リンク式)
●スイングアーム=①純正リンク取付部を切除の上で、リヤ車高をアップさせたプレートを設置(溶接)
②上側スタビライザー取付・加工
●ショックアブソーバー=オーリンズ製(車高調整無し)
◆ホイール
●フロント=ZXR400用純正アルミ鋳造ホイール(3.50-17)
●リヤ=ハイポイント製アルミ鍛造ホイール(5.50-17)
◆タイヤ=ブリヂストン製ハイグリップラジアル
●フロント=120/70ZR17
●リヤ= 180/55ZR17
◆ブレーキ(フロント)
●ブレンボ製ラジアルマスターシリンダー
●ブレンボ製キャスティング4Pキャリパー+プロト製ブラケット
●アクティブ製グッドリッヂステンメッシュホース
◆エンジン=フルオーバーホール
●シリンダー=ポート加工(主に各ポートを横方向に広げて開口面積の拡大&平滑化)
※ポートタイミングは僅かに上げた程度
●リードバルブ=ボイセン製プロリード(FRP材2枚合わせ構造)
※フロントバンク=クランクケースリードバルブ/リヤバンク=ピストンリードバルブ
◆キャブレター=純正キャブレター+燃調セッティング
◆エキゾーストマフラー=SP忠男製ジャッカルチャンバー
◆ステップ
●ワンオフ製作ステップホルダー(タンデム対応)
●バトルファクトリー製ステップバー&ペダル
◆ハンドル=デイトナ製セパレートハンドル(タレ角可変タイプ)
◆その他
①アルミ製ラジエターリザーバータンク(ワンオフ製作)
②アルミ製オイルタンク(ワンオフ製作)
③マジカルレーシング製カーボンミラー
④連結式サイドスタンドブラケット(スタンド位置・長さ調整)
このRDの他にセカンドバイクとして、NSR250R/GSX-R1100/CBR900RR/CBR1000RRなどを乗り継ぎながらも、他では味わえない「2ストローク500」のエンジンフィーリングを愛してこられました。生まれ変わったRD500LCで、その真骨頂を堪能出来るようになり、喜んでいただけました。
セカンドのCBR1000RRと共に楽しくバイクライフを送られていましたが、たいへん残念ながら、こののち数年後にご病気により亡くなられてしまいました。あらためてご冥福をお祈りいたしつつ、こよなく愛されたマシンとして紹介させていただきました。
※この車両は、その後、関西にお住まいのご兄弟に引き継がれました。