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カスタマイズについて

 パドックⅢでは、豊富なレース活動で得た経験を元に、その知識と技術を傾注して、お客様のご要望に最適なカスタマイズとなるように取り組んでいます。
 また、走行性能に限らず、安全性能や環境性能・保安基準などを含めた取組みで、安心してお乗りいただけるバイク作りを目指しています。

パドックⅢ カスタマイズ計画 ブログ

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粘度(エンジンオイル)セッティング

2021-07-23
   ①5W-40(MOTUL 300V)
   ②冷却フィン付フィルターカバー
 エンジンオイルに、10W-30(粘度指数)などの「マルチグレード」(高温時の粘度維持と低温時における流動性を両立)のオイルが登場して,すでに数十年経ちます。もはや当たり前になりましたが、近年ではどんどんとワイド化して10W-505W-40などが販売されるようになりました。エンジンオイルとしての基本性能を確保した上で、それぞれのエンジンと使用条件に適した粘度セッティング出来る幅も広がることになっています。※基本性能の内、摩擦低減(減摩作用)に最も重要な油膜の強さは、粘度とはあまり関係ありません。高温時に「極端」にサラサラになってしまうと、油膜保持力にも影響が出るようですが。

 近頃、スーパースポーツ車(近年の)でも、柔らか目(5W-30/0W-20など)を好んで使う方もいらっしゃるようですが、当店では使っていません。高温側の指数が「40以上」のオイルを使っています。問題となるのは高温時の粘度維持です。サラサラのオイルでフリクション(抵抗)が少なくエンジンが軽く回るのが良いと思われているのかもしれませんが、たとえ良質のオイルで油膜はしっかりしていると仮定しても、オイルの「密封作用」が低下して圧縮漏れや燃焼ガスの吹抜けが起こりやすくなる恐れがあります。圧縮漏れが顕著になると、圧縮させるための抵抗が減って更に軽く回るように感じてしまいます。また、あまりサラサラになってしまうと油圧が低下して、潤滑通路内の狭い隙間やオイルジェット(吐出穴)に押し込めなくなり、必要箇所に行き渡らなくなる可能性もあります。このような理由から、指数40以上を使用しています。

 当店では一般に、空冷エンジンや旧車系・鉄製シリンダースリーブのエンジンなど、各部クリアランスの大き目(特にピストンクリアランスの)の車種に、10W-4015W-50の範囲を、クリアランス小さ目の、近代の水冷エンジンやアルミメッキシリンダーのエンジンに、5W-4010W-50の範囲でチョイス・ブレンドして使っていただいています。

 ただ最近、少し変わった理由から、旧車の空冷エンジン車に「5W-40」のオイルを試すことが重なりました。エンジンの始動性や始動直後の冷間時(適温になるまで)のエンジン特性の向上を狙ったものでした。これまでは密封性を上げて爆発しやすくすることを重視していましたが、冷間でも軽くなめらかに回りやすくことで、始動のしやすさ(回しやすさ)始動直後のアイドリング安定化暖機運転の時間短縮などへの効果を期待して試してみました。そして、その効果は確かに(劇的とは言いませんが)有りました。密封性が若干落ちるものの、爆発出来る位の良いコンディションのエンジンであれば、5W(低温指数)程度のオイルでも場合によっては有効かもしれないと思いました。

 そこで、当店のSRでも試してみることにしました。エンジンをチューンアップして以来、「MOTUL 300V-ファクトリー 15W-50」を使ってきましたが、「5W-40」を使って、どのような変化があるのか?テストしていこうと思います。(望ましいのは始動性の向上や「ケッチン」の低減ですが、実際にはどうなるでしょうか?)

 ついでのカスタマイズで、オイルフィルターの交換に伴って、フィルターカバー冷却フィン付きの物(画像②)に変更しました。少しはオイルの冷却に効果があるかもしれません。(?)

※1.当店のSRは、オイルクーラーは装備していませんが、油温管理はしています。夏季(30℃超)でも、油温が100℃を上回ることは無いのを確認していますので、高温指数が40でも大丈夫だろうという前提です。油温が100℃超高負荷を掛け続けるような場合では、やはり「高温指数50」のオイルが望ましいと思います。

※2.高温側粘度指数は粘度そのものを表したものではありません。どんなオイルでも、高温になるほど粘度が低下してサラサラに近くなっていきますが、その低下の度合いを表していて、高い指数ほど低下が少なく粘度を維持出来ると考えて良いと思います。

※3.オイルの基本作用には、減摩(摩擦低減)作用・緩衝作用・密封作用・冷却作用・清浄作用・防錆作用などがあります。

フルLED化への道・Ⅲ

2021-07-03
①ナノタイプLEDウィンカー
②振動対策
③点滅補正用抵抗配線
④メーター照明用LEDバルブ
 バックオーダーで7月入荷予定だった「ナノタイプ」LEDウィンカー(ハイサイダー製シングルタイプ)が、予定が早まり6月に入荷しました。しばらくは展示しつつ、保安基準の確認をしながら取付けの準備をしていました。

 まず、保安基準に関しては、道路運送車両法に最小面積(光る部分が7cm²)の規定がありますが、追加された項目があり「ヨーロッパ規格の認証」を受けた物は認可されることになっていました。そのため、直径10mm程度(0.8cm²弱)しかなくても保安基準をクリアするようです。※Eマークの付いた製品となります。その他に、左右ランプの間隔の規定(レンズ再内縁の間隔・フロント=240mm/リヤ=150mm)があるので、それに適合するように取り付ければ良いことになります。

 丸目1灯ヘッドライト(レンズ径180mm)のライトステーにウィンカーを直に取り付けた場合、一般的なウィンカーであれば、ほぼ大丈夫な規定(当店のSRでも現状240mm強でした)ですが、「ナノタイプ」の直付けでは完全に寸法が足らないことになってしまいます。ウィンカーのみ飛び出した形では様にならないし、他の場所でもあまり良さそうな所(振動に対しても)は見つからなかったので、ライトステーの取付幅を広げて取付ることにしました。

 そこで、振動対策も兼ねてライトステーをラバーマウント式に変更した上で、アルミ製カラーを挟んで調整するようにしました。ウィンカー本体にカラーを使って最終調整して240mmを上回るように取付けて保安基準はクリアしています。元々、フロントブラケット(メーター/ライト/ウィンカー)を製作した際に、純正と同様のラパーマウントにしていましたので、2重の振動対策となります。「ナノタイプ」はウィンカーとしてはけっこう高額なので、念を入れて対策をしておきました。また、ハーネスの保護としては、配線(かなり細目)のボディ出口付近に熱収縮チューブをかぶせた上で、ロングナットで固定してできた隙間にシリコンコーキング材を埋めて振動対策(画像②)としました。

 実際に作動させると一つ問題がでました。前後ウィンカーは正常に点滅しましたが、インジケーターだけは点滅せずに点灯したままとなっていました。少し不思議な現象でしたが調べた結果、やはりウィンカー全てがLEDとなって消費電力が少なくなり過ぎ、リレー(ディトナ製旧型LED対応リレー)の使用限度を下回ったために起きたものでした。適応範囲を広げた新型リレーも店頭在庫していましたが、もったいない?ので消費電力を上げるための回路を増設することにしました。
 手持ちの「抵抗」を試した(簡易に接続)ところ、インジケーターも点滅していました。手持ちの最小値のものが1kΩでしたので僅かな電流増加でしょうが、これで良さそうならと配線を作り回路を完成(画像③)させました。

 最後に、スピードメーター内の照明球(細いウェッジ球T5orT6.5)をLEDバルブ(画像④)に換装して、「フルLED化」を達成しました。今後は振動対策の成果と充電量への影響を、引き続き観察していくことになります。

FCRキャブレター換装・XS650spl

2021-06-27
①FCR35キャブレター
②ラムエア製フィルター&オイルキャッチタンク
③JB製スロットルKIT&薄型スイッチ
④エンジン始動動画
 5~6月にかけて、FCRキャブレター換装をしたのは、XS650spl(´78年型)です。旧車でもZ系など4気筒エンジンではよく行うカスタマイズですが、並列2気筒エンジンの旧車で行うのは、初めて?です。

 まずは、XS650splですが、少しマイナー?なバイクですので、その年代の方でも覚えの無い方もあるかもしれません。「spl」は当時のヤマハがアメリカンスタイルの派生モデルの総称として使っていた名称です。ベースとなったのは、ヤマハ初の4stエンジン車として1970年に発売した「650XS-1」を起源とする「TX650」(SOHC/2バルブ/180゜クランク2気筒)です。XS-1は仕様変更につれてXS650~TX650と車名を変えていきます。シリンダー前傾角を変更されたフルモデルチェンジもありましたが、ポイント点火方式(進角は遠心ガバナーによる機械式)を含めて、根本的な基本設計はあまり変わらないようで、エンジン関係は「´60年代」風な作りと言えそうです。          
※この車両は、以前のオーナーの手によって、そのアメリカンスタイルの「spl」をロードスポーツ風にカスタマイズされていたようです。

 点火系のトラブルから起こっていたエンジン不調(失火)を修理したものの、燃料系にも不具合がありキャブレターをいったんオーバーホール(社外品を多用)しました。                 
 「XS650spl」では、乗りやすさ(扱いやすさ)を優先して、キャブレターはCVタイプ(負圧式スロットルバルブ)となっていましたが、純正部品の供給も少なくなった現状では、完調なキャブレターにするには足らない部品もあり、FCRキャブレター換装に踏み切ることになりました。
 JB-POWER(ビトーR&D)には、XS-1~TX650用(こちらは、直引きスロットルバルブのVMキャブレター)にKITがラインナップされていたので、その中の35mm径FCRキャブレターを選択しました。このKITは連結式ではなく、1気筒分単独のためそれぞれがスロットルケーブルで開閉されなければならず、分配式ケーブルスロットルKITも併せてJB製を使用しています。差込口径の違いがあるので、インシュレーターもXS-1用に換装(社外品)しています。

 エアフィルターラム・エア製を採用しオイルキャッチタンクワンオフ製作(スペースがあまり無く、かなりの薄型)しました。
 排気系はエキゾーストパイプは純正のままでしたが、マフラー(サイレンサー)はアメリカンバイクによくみられるようなタイプ(排気効率は?マークです)に替えられていました。ポイント点火方式と共に、FCRキャブレターのパフォーマンスにバランスするのか?(はたまたバランスさせてパフォーマンスを発揮出来るのか?)不安要素が有りましたが、慎重に燃調セッティングを進めました。

 燃調が合ってくると、FCRキャブレターらしいレスポンスの良さが発揮されるようになりました。(④動画添付)走行テストでも、少しラフかなと思うスロットルワークでも、しっかりとエンジンはレスポンスして力強く加速出来るようになり、高回転域でのパワーの伸びも良好になりました。かなりの低回転域でも一定走行可能で、日常使いからワインディング路のライディングまで使える仕上がりになったと思います。※スポーツライディングには車体性能が低いため無理は禁物ですが、リヤショックアブソーバーがオーリンズに換装されているので、少しは対応出来ているようです。

 点火時期制御の問題など不安要素もありましたが、エンジン本体の設計が程良く高性能を狙って(当時として)いたのが、うまくFCRキャブレターとマッチしてくれたのではないでしょうか(?)今後、排気系点火系(フルトランジスター点火式など)をレベルアップすれば、更に高いパフォーマンスが得られると思われ楽しみです。※オーナーさん次第ですが。
 また、純正部品は少なくなっているものの、意外(?)に多種の社外品(XS系用=クォリティは不明)が販売されていたのは、良い発見でした。
  
 

フルLED化への道・Ⅱ

2021-06-18
①60W?ファン式LED
②ヘッドライト後方
③リヤウィンカー配線補修
④12V25WフィンタイプLED
 手始めに、「25WフィンタイプLEDバルブ」を装着してみたSRのヘッドライトですが、結果として、充電量に問題が発生しました。
 「MOS-FETレギュレーター」の特性としては、消費電力の違いによる充電電圧・電流への影響がほぼ無い(極めて少ない)のですが、「オートライト回路(Ⅱ)」との兼ね合いだと思われる影響が出て、充電電圧がかなり高くなってしまいました。アイドリング回転で、すでに15Vを少し超えて、走行中には、最大値16.2Vまで上がるのを確認しました。一応制御は出来ているようですが、制御電圧が高過ぎてそのままでは電装系に悪影響が出る範囲なので、一度ハロゲン球に戻して再度電圧をチェック(レギュレーター破損の可能性もあるので)しておきました。
 ハロゲン球では元の電圧値に制御されていましたので、やはり、消費電力が小さく(55W>25W)なったことによって充電電圧が上がったのは間違いないようです。
※通常の純正充電システムでも、程度の差はありますが、同様の変化が起こりますので確認(電圧/電流)が重要です。

 そこで、消費電力がハロゲン球と同等(50~60W)のLEDバルブを探しました。2輪車用としては見つからなかったのですが、4輪車用(12V/24V共用)の中に「120W=業界最高クラス(2個セット)」と謳っている製品を見つけました。かなり怪しい表現の製品ですが、1個当たり60Wということならばと、実験用と割り切って採用することにしました。※こちらは、ファンタイプででしたが、ケース加工によって放熱性には問題はないと思われます。
 エンジンを始動してみる(~3000rpm)と、ハロゲン球と比べて0.3~0.4V程度高いものの、充電電圧として適切な範囲になっているようなので、走行して高回転まで確認しました。最大値14.5V位(バッテリー端子電圧はおそらく14.8~14.9V)でしたので、ひとまず充電問題は合格として引き続きテストしていきます。

 耐震性に関して、さっそく(タイムリーに?)トラブルが発生しました。リヤウィンカーの配線が切れているのを出先で発見しました。※LED対応ウィンカーリレーは消費電力に関わらず一定の点滅をするため、リヤ側が点灯しなくなっても変化がなく気付きにくくなっています。
 破損箇所はユニット内基盤からのハンダ剝がれと、ユニットケースから外部に出た直後で切断されたものでした。いずれも、配線をベースプレートに沿わすクランプ(両面テープ式)が剝がれてしまい配線が大きく揺れたためだと思われます。以前に出た故障事例でも同様の状態だったので、LEDランプの場合には配線の確実なクランプと、ケース(ユニット)から出た直後の配線の保護が重要だと分かりました。

 今回はケースを掘って基盤を露出させて再ハンダ付けと、残った短い配線にハンダ付けで接続して補修(配線には保護チューブ)することが出来ました。その後の処置として絶縁と振動対策を兼ねて、シリコンコーキング材を塗布して盛り上げました。シリコンコーキング材は固まっても柔軟性があり振動から配線を保護するのに適していると思います。また、両面テープで貼り付けたクランプと共にベースプレートに直接タイラップ固定しておきました。処理が少し?汚く見えるのが欠点(画像③)ですが、その手法も今後の課題として考えようと思います。

※追記
60WのLEDバルブで55Wハロゲン球(Loビーム)より高い充電電圧になったのは、やはり表記がおかしいのだと思われます。12V/24V共用で60Wというのは、電流値は何Vを基準にしたものなのか?どこにも表示されていませんでしたから、12Vでは実際には60Wの消費電力ではないのでしょうね。


フルLED化への道Ⅰ

2021-06-11
①LEDヘッドライトバルブ
②ライトケース加工
③テールライト
④リヤウィンカー
 ヘッドライトを明るくしたい・ハロゲン球は黄色っぽいので白色光にしたいと、LEDヘッドライトに関する相談を受けることが多くなりました。昨年、光度不足対策のための回路製作を掲載した中でも記述したように、少なからず問題点が有り、どなたにでもお勧め出来るというわけではありませんでした。その問題点とは

配光=Hiビームで中心付近に集光して、明るく照らせるか?
    Loビームの上下カットがハッキリとしいて、手前側を照らせるか?
充電量(電圧・電流)への影響=消費電力の違いから過充電などの可能性
放熱性=LEDバルブ周辺(主に後方)の放熱可能な空間の有無
収納スペース=ハロゲン球と比較して、後方への突出し量が大きい  など

 ①配光に関しては、H7やH9/11などのHi/Lo切り替えの無いシングルタイプはわりとマッチングは良いようです。H4系のようにダブルタイプでは、マッチングが悪い物も少なくない状況です。この問題に対しては、現時点では試してみるしかないと思われます。※微調整の出来る物も有るので、そういった物を選ぶことも出来ます。
 ①②③④の問題点が全て当てはまるのが、ネイキッド系に最も採用されている「丸目1灯H4ハロゲンヘッドライト」です。そこで、対処法を確立出来ればと思い、当店のSRを使ってテストしていくことにしました。また、LEDの灯火系パーツ(ウィンカー・テールライトなど)は、製造メーカーとして耐震性はあまり高くないと謳っている物が多いので、あえてSRに装着して耐震処方についてもテストしていくため、灯火系のフルLED化をすることにしました。

 2月の車検時にリヤウィンカーはLEDにしていたので、続いてテールライトを「丸型LEDランプユニット」に換装、ヘッドライトには手始めに「12V25W(2輪車用冷却フィンタイプ)LEDバルブ」を装着してみました。
 ヘッドライトは以前にライトケースを軽く・錆ない樹脂製に変更するために、ホンダ純正(CB-SF系でライトユニットごと)の物を流用して、換装していました。ホンダ車はヤマハ車と同様にハンドル周辺の配線(ハーネス)を全てライトケース内に収納するので、比較的内部スペースが大きくなっています。それでも、やはりLEDバルブの後端はケースに干渉してそのままでは装着不可能(試着したのはフィン式/ファン式の2製品)でした。そこで、放熱性の確保も兼ねてケース後部を切断(画像②)しました。ケース内部には各種ハーネスを束ねてありほぼ隙間の無い状態ですが、これで後方へ放熱可能となっていると思います。

※LED(発光ダイオード)は光にはほぼ熱量は無いものの、ダイオード自体は発熱します。特にヘッドライトに用いる高輝度LED では発熱量が大きく放熱しなければ破損します。 

 通常のフィラメント式電球では、その熱によりレンズが焼けて溶けたり、色落ちしたり(特に小型の物では)してきます。発光に熱の無いLEDには、その心配は無く綺麗な輝きが続くというメリット(発光ダイオード自体の耐用時間も長い)が有ります。充電系との関係など確認しながら、これから灯火系のテストをしていきたいと思います。

※フロントウィンカーには、「ナノタイプ」のLEDウィンカーを装着予定ですが、現在メーカー欠品中で入荷待ちの状況です。

※参考
 色落ちして色が薄くなったレンズ(ウィンカー・テール/ブレーキ)では、車検における保安基準を満たさず不合格になることも有ります。
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