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カスタマイズについて

 パドックⅢでは、豊富なレース活動で得た経験を元に、その知識と技術を傾注して、お客様のご要望に最適なカスタマイズとなるように取り組んでいます。
 また、走行性能に限らず、安全性能や環境性能・保安基準などを含めた取組みで、安心してお乗りいただけるバイク作りを目指しています。

パドックⅢ カスタマイズ計画 ブログ

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4気筒フルエキゾーストマフラー製作中

2022-03-06
①EXパイプエンジン取付部とフランジ
②#4シリンダーEXパイプ
③曲率1/2(#1&4下側)
④第1集合部(2ヶ)
⑤#1&4EXパイプ
⑥4気筒EXパイプ(1stセクション)
 これまでに、テールパイプ(集合部からサイレンサー差込部まで)・エキゾーストパイプ単体での製作や、SR&RC390などシングルエンジン用のフルエキゾーストマフラーは製作していましたが、初めて並列4気筒バイクの「フルエキゾーストマフラー」の製作依頼をいただきました。

 お客様は、カスタマイズ事例で紹介している「17インチZ1-R」のオーナーさんです。この車両には、18インチ時代から「ナイトロレーシング製」エキゾーストマフラーを装着していました。17インチ化&モノショック化の際には、サスペンションリンク機構との干渉を避けるために、湾曲加工を施したものの、基本的にはそのまま継続して使用することが出来ました。
 ただ、搭載角度を変えたエンジン・ZX10R流用の湾曲スイングアームなど、レイアウトの上であまりマッチしていないのが、不満の残るところでした。とは言えこの車体にマッチするマフラーなど存在するはずも無く、あとはオリジナルでのワンオフ製作しか考えらませんでした。

 4気筒フルエキゾーストマフラーとなると、シングルエンジンに比べて、より正確なパイプ長湾曲角度の設定・製作が必要なことと、集合部の製作も必要となり技術的に難易度が上がります。更に性能的に良いものが出来るのか?、かなり難しいことなので、なかなかお勧め出来ずにいました。
 チタン材の加工や溶接の経験と、エキゾースト系の製作手法を、ある程度会得出来たと思いお勧めしたところ、納得していただいてご依頼をいただくことになりました。

 製作にあたり基本となる集合方法は、「4-2-1」集合システムとしました。かねてより(排気デバイスやサブチャンバー・ジョイントパイプなどを用いない場合においては)、このシステムが最も優れていると考えていました。特定の回転域のトルク谷が出にくく、全域排気効率の良いエキゾーストシステムが狙えると思います。
 特にこの度の「Z1-R」はノーマル5速ミッションのままなので、どうしても立ち上がり加速でトルクの出にくい回転になってしまうことが多くなっていました。※回りの良いエンジンを狙って排気量を1015cc(Z系としては小さ目)としたのも、中回転域のトルク不足の一因です。今回のマフラー製作では、性能面の目標は中回転域のトルクUPを狙いたいと思います。。※高回転域の最高出力だけなら「4-1」(ナイトロレーシング製もこれです)の方が、優れている集合方法だと考えられます。

 製作に取り掛かったのは、エキゾースト(EX)パイプのエンジン取付部寄りの第1湾曲部(画像①)からです。4本のEXパイプが2段に集合する1stセクションまでを画像にしました。まだ製作途中ですので、次回、実際の製作工程の説明を加えて紹介したいと思います。

防風シュラウド(SR)

2022-02-28
①フレームシュラウド
②ベースプレートとホースカバー
③シュラウド上部
 一般的な空冷エンジン(ウェットサンプ潤滑方式)では難しい、油温オーバークール対策ですが、SRは「ドライサンプ」というエンジンオイルを別体タンクに溜めている方式なので、少しは出来ることを考えてみました。

 手始めに、保温効果を狙ってオイルタンク部分(フレームのメインパイプ)に断熱材を張ってみましたが、あまり油温を上げる効果は無かったので、次の策として、アンダーフレームの前に設置する防風目的のシュラウドを作ってみました。
 ヘッドパイプから下方に伸びて二股に分かれるまでの一本パイプの部分は、オイルタンクとエンジンを繋ぐオイル通路(オイルタンクの一部)となっています。エンジンの前方に位置して、走行風の最も当たりやすい所(冷却には有効的)です。そこで、この部分の前に走行風が当たらないように遮蔽板を設置してみることにしました。

 平板状の遮蔽板では空気抵抗になりそうなので、「」の字状のシュラウドと呼べるものにしました。取付けには、下方は純正のアンダーガード取付ステーにアルミ製ベースプレートを設置して、このベースプレートに連結するようにしました。上方は、横置き式ステアリングダンパー取付用ボスをフレームに溶接していましたので、これを活用しました。
 単体での振動対策(ラバーマウントなどの)が困難そうだったので、シュラウド本体は5mmとしてかなり頑丈なものとしています。また、ぴったりとフレームパイプを覆う大きさにして、エンジン本体への走行風の影響が出ないようにしました。場合(シリンダー温度)によってはシリンダー・シリンダーヘッドへの走行風を遮るシュラウドを追加出来るように、ネジ穴(片側3ヶ所)を設けておきました。※「」の字の角度はその延長線上がシリンダーフィンに干渉しないように設定しました。

 エンジン下部にはジョイントホース(エンジンとフレーム内オイル通路を繋ぐ)が有りますので、ここをカバーするプレート(材質はチタンと凝ってみました)も製作しました。このプレートはラバーマウントとしています。

 この冬はたいへん雪が多く、雪が融けて消えることが稀にしかなく、試運転すらなかなか出来ずにいます。春先(または初冬)のまだ肌寒い時期に効果を出したいと考えていますので、頃合いを見てテストはしておきたいと思います。

※追記(2022.5/9)
 長らく試運転を出来ずにいましたが、ようやく5月に入った初日に今シーズン初乗りが出来ました。月にはすでに夏日を記録するくらい暖かくなってしまい、防風シュラウドのテストにならないかと心配していましたが、当日は曇りで気温16°とテストとしては良い?条件になりました。※走行中(10km程度走行時)に霧雨が降り出して、さらに良いテスト(楽しくはありませんが)になりました。

 温度経過は、シリンダー温度=61°・油温=27°まで暖気運転して出発。日差しが無いせいで、シリンダー温度もなかなか上昇しない状況でしたが、油温は走行速度に関わりなく着実上がるようになり、10km走行で60°を超えていました。霧雨の降り出した10km以降は、シリンダー温度は走行風の影響で上下しつつ60°台後半から70°台前半を行き来した状態となりましたが、油温はその後も少しづつ上昇して、約20km走行した時には、64°まで上がっていました。※エンジン回転数は高くても4000rpmまで

 12月の試運転の時より少しは気温が高いとは言え、防風シュラウドの「効果」はあったようで、確実に油温が上がりやすくなったようです。冬期間をはじめ寒い時期には効果を発揮してくれそうです。 今後は、暖かくなるでしょうから、どのくらいの気温まで使えるのか?特に高回転を使って走る際の経過を観ることにします。

 ただ一つ想定外なのは、「シリンダー温度」が上がりにくくなったことです。12月でも走り始めて2~3kmもすれば70°を超えていたのが、なかなか上がらなくなると共に、走行スピード(風)による影響の上下動が大きくなったように見受けられました。もしかしたら、このシュラウドの「整流効果」でシリンダーフィンへの風通しが良くなり「冷却効果」が出ているのかもしれません。
 もしそうであれば、シリンダーの「冷却効果」と油温の「防風保温効果」のバランスで、どんな結果が現れるのか?注目して観察したいと思います。 

 

オリジナルペイント(モンキー125)

2022-02-13
①シルバーメタリック(キャンディレッド下色)
②抑えクリア
③キャンディレッド上色
④ホワイト
⑤ブルーメタリック
⑥上塗りクリア(完成)
⑦モンキー125
⑧FTRと2ショット
⑨タンクエンブレム貼付
⑩サイドカバーエンブレム
 久しぶりにオリジナルペイントの依頼が来ました。オリジナルペイントは、他の人とは違う自分だけの表現となり、カスタム度は格段にUPします。※満足度も高いものの中古車査定では、逆に下がりますので思い入れが必要です。

 ご依頼はモンキー125です。50cc時代からの「モンキー」らしさを大事にした、カスタマイズを進めて来られていました。カラーリングに関しても、より「モンキー」らしい?デザインに惹かれたそうです。それが、50cc時代後期に定番化した「トリコロールカラー」でした。トリコロールカラーはホンダの代名詞と言えるカラーリングですが、モチーフとなったのはFTR風スラッシュラインのデザインでした。

 モンキー50の純正色では、ストライプ(赤ライン&白ライン&ウィングマーク一体式)部分はデカール(ステッカー)となっていますが、オリジナルペイントですので全色(ウィングマーク以外)を塗装することになります。※ウィングマークは立体エンブレム(純正)を後で貼り付ける予定
 純正色がモチーフになる場合、その「色合わせ」が問題になります。4輪車用には各塗料メーカーから調色表が作られていて、その分量で混ぜ合わせればほぼ同じ色が出来ますが、2輪車用には調色表は作られていません。そのため、現車の色を透かし見るようにして観察して、その成分を推察して「色あわせ=一般的に3~5種類の色を混ぜ合わせて作ります」しています。写真や画像ではかなり困難な作業ですので、可能な限り現実の色見本を用意したいところです。※あまり色を合わせる必要がなければ写真などからでもOKです。
 今回はトリコロールカラーのモンキーは無かったものの、FTRのお客様がいらしたので、本家のFTRをお借りすることが出来ました。

 実際のFTRのフューエルタンクを確認すると、「赤ライン」はキャンディカラー(半透明の上色で下色のシルバーメタリックが透けて見える塗色)・「青部分」はブルー系メタリックカラー・「白部分」はソリッドカラー(メタリックやパールの入らない)となっていました。※ホンダ車のトリコロールカラーでも、他車種では違う組み合わせであったり、色合いが変えてあったります。

 そこで塗装は、以下の工程(順序)にしました。
①キャンディレッドの下色のシルバーメタリック(粒子の粗さは細目と中目の間くらい)
②抑えクリア(シルバーメタリックの表面は細かな凹凸となるため、半透明の濃さにムラが出るのを防ぐ工程=30分から1時間自然乾燥)
キャンディレッド(塗り重ねは色の濃さで決定し、厚み・艶はクリアに変えて塗装)
ホワイト
ブルーメタリック
⑥上塗りクリア(仕上げ専用で②とは別の塗料)

 キャンディカラーは下色のシルバーメタリックに重ねているため、ホワイトの上に塗ると淵(端)の部分にわずかにシルバーメタリックが見えてしまうので、先に塗ってホワイトを上に乗せるようにします。

 また、お借りしたFTRは2003年型で、すでに20年近く経っている車両です。塗装も色あせ・日焼けなど変色しているはずですので、今回の色調は、「発色」が良くなる(明るく見える)ようにしました。※補修の場合は、色あせなど変色した状態に合わせて色合わせします。

追記(3月3日)
 2月末に、塗膜の完全乾燥(当店の使うクリア塗料は3~4週間)を待って貼らずにいた、エンブレムを貼り付けました。タンクエンブレムはモンキー125純正の立体エンブレムです。画像(⑨⑩)
 

油温管理✙

2021-12-18
①オイルタンク保温材
②出発直前
③20km走行直後
④ワイヤーケーブル
 11月下旬から急速に寒くなって、空冷エンジンにとってはオーバークールになりそうな季節になりました。山間部のワインディング路では、未明に降りた夜露が日中になっても乾かなくなってしまいました。路面温度も低く、とても「頑張って」走ることはできないものの、エンジンだけでも「完調」であれば「気持ち良く」走れるのではないかと想像しました。そこで、空冷SRでエンジン温度(油温・シリンダー温度)の適正化が出来ないかと、その方策を考えることにしました。

 10月までの計測結果から、手始めに通常走行では低すぎる(外気温25でも70台)「油温対策」を考えてみました。SRはドライサンプ(エンジンオイルを別体オイルタンクに貯めて循環させる)式で、メインフレームがオイルタンクとなっています。フューエルタンクが被さっているとは言え、走行風は当たっているはずです。オイルタンク(フレーム)を走行風が当たらないようにしつつ、油温が上がってきたところで保温するように、断熱材を巻いてみました。貼付け式の断熱グラスウールと巻き付け式のグラスウールを組み合わせています。まずは、この「防風保温効果」がどれくらいあるのか?試してみることにします。

 外気温13℃位(夕刻・晴天)の中、テストに出かけました。シリンダー温度61℃まで暖機運転(画像②)したものの、油温は28℃までしか上がってませんが、この段階で出発して20km程走らせてみました。エンジン回転はおおむね3~4000rpmkmも走ると、シリンダー温度は70℃近くに上昇しましたが、油温は低温の走行風の影響からか、なかなか上がって来ません。途中少しだけ5~6000rpmまで回転を上げても、走行中の油温は50℃を僅かに超えた程度まででした。

 走行直後(画像④)には、シリンダー温度89℃・油温66℃を示していますが、これは帰店直前の2回の信号待ちで上がったものです。走行中のシリンダー温度は、70℃前後を行ったり来たりといったところでした。やはり停車時間が長くなると、油温を上げられるもののシリンダー温度が急上昇するので、こちらはオーバーヒートの恐れが出てきます。上手く停車時間を調節出来れば、油温を上げられそうですが、なかなか適正範囲にするのは難しいようです。

 エンジン停止後の温度降下をみても、結果として、油温の「保温効果」は多少有りそうでも、防風による暖まりを速くする効果は、ほぼ有りませんでした。今後は「防風効果」を高める策を考えてみます。

✙其の二
 エキゾーストマフラーの「脱落防止策」として辿り着いた「ステンレス製ワイヤーケーブル」ですが、さらに進めてエキゾーストパイプの保護(振動対策)に役立てないかと思い、試していました。
 脱落防止としては、ほぼテンションを掛けないようにしていたところを、左右のアンダーフレームからエキゾーストパイプに取り付けたステンレスバンドに向けて、1.5mmワイヤーケーブルを一周回して通しています。中間部を絞って、両側から軽くテンションが掛かる程度にしてみました。手でエキパイを振ってみると、それなりに引っ張られて抵抗があるのが分かります。

 エンジンを始動すると、アイドリング(低回転)近辺におけるエキゾーストパイプの振れが、かなり抑えられるようになって、明らかに振幅が「小さくなっていました。SRなどのビッグシングルの振動は、低回転域では低周波の大きな振れ幅、高回転域になると高周波・小さな振れ幅に変化します。このワイヤーケーブルを応用した「振動対策」は、少なくとも低回転付近のエキゾーストパイプの保護には有効だったようです。何度か走行していますが、まだ切断されずにいますので、耐久性も期待できそうです。
 
 

SRタコメーター交換

2021-12-04
①ディトナ製タコメーター(旧タイプ)
②タコメーター配線
③メーターパネル追加工
④SR+「デンタコ」
 LEDヘッドライトバルブを装着した頃から、指針の反応遅れが見られるようになった電気式タコメーター(ディトナ製VELONA)ですが、その後は、針触れ(大きな振れ幅)や高回転域では指針が動かなくなるなど、さらに悪化していきました。

 LEDバルブからのノイズ(電磁波)の影響も疑い検証しましたが、そこには問題はありませんでした。やはり原因は、タコメーター自体の回路に不具合があるようでした。 
 発端は、点火系からの異常なパルスの入力にあったと思われました。症状が出始める少し前に、プラグキャップが抜けて浮いていることがありました。イグニッションコイル(ポッシュ製)と一緒にプラグキャップ(テイラー製)も換わりましたが、ハメ合いが硬目で、しっかりとハマりきらないで使用していたようで、振動で抜けていったと思われます。ハメ直した直後にチェックした時には、問題は無かったのですが、このことが後に影響したと考えられます。※過電圧や振動などの要因も可能性があります。

 VELONAタコメーターは、点火パルスを拾うのに、プラグコードに発生した「電磁波」を電気信号に変換して入力する方式となっています。車種によっては感度が低く上手く拾えない場合もあり、専用の増幅器(製品名・パルスジェネレータ)を用いて作動させることもあります。SRもこのパーツが必要な車種の一つです。
 プラグキャップが浮いた状態では、キャップ内の端子とプラグ端子が離れてしまいますが、その離れた端子間をスパークが飛んで、異常に「過大電磁波が発生していたと思われます。その影響で、上記パルスジェネレータかメーター本体の内部回路が破損したと考えらました。

 まずは、パルスジェネレータを交換してみましたが、3000rpm位までは正常に戻りましたが、その上の範囲では改善されませんでした。しばらく、その状態で使っていましたが、来シーズンに備えてタコメーターを交換しておくことにしました。

 用意したのは、「旧タイプ」のディトナ製電気式タコメーター(画像①)です。ちょうどスピードメーター(ディトナ製機械式)と同じ本体ケースとなりましたが、選んだ理由は「点火パルス」の入力方式にあります。この製品では、イグニッションコイルに発生した「1次電圧」をそのまま利用して、パルス入力とする方式(VELONAと同じプラグコードの電磁波を使うことも可能)に対応しています。感度に対しても「調整式」となっていて、過去には色々な車種で安定した指針の動きにすることが出来ていましたから、SRには適していると思います。

 取付ピッチは同じですが、ハーネスの取り出しのための穴をあける追加工(画像②③)は必要でした。SRCDI点火ですから、イグニッションコイルの線(フルトランジスター点火では線)を分岐させて、パルス入力線に接続し直しました。エンジンを始動ところ、感度は「標準設定値」で順調に作動(④動画)していました。高回転域は試運転で確認して、必要があれば調整します。

※「旧タイプ」のディトナ製電気式タコメーターは、現在では「廃番」となってしまいました。VELONAのように温度計や時計機能の無い「回転計」だけの製品でしたが、点火方式もCDI点火(SRRZ系などの2st車)・フルトランジスター点火(一般的な4st車)のどちらでも、イグニッションコイルの「1次回路」で対応出来るので重宝していました。
 プラグコードの電磁波を利用する方式は、プラグコードをはじめ「点火系」のチューンアップに対応できないことが多いこともあり、出来れば「旧タイプ」が再販されるか、「同等仕様の新製品」が発売されることを望んでいます。
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