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カスタマイズについて

 パドックⅢでは、豊富なレース活動で得た経験を元に、その知識と技術を傾注して、お客様のご要望に最適なカスタマイズとなるように取り組んでいます。
 また、走行性能に限らず、安全性能や環境性能・保安基準などを含めた取組みで、安心してお乗りいただけるバイク作りを目指しています。

パドックⅢ カスタマイズ計画 ブログ

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ヘッドライトチューンアップ

2020-08-29
 ヘッドライトのカスタマイズと言えば、現在では電球をLEDバルブに換えたり、LEDヘッドライトユニット(全体)に換装することが多くなっていると思います。
 ただし、ユニット換装では問題無いのですが、電球をLEDバルブに換えるだけの場合にはうまく照射出来ない問題が起こることが多々あります。ハロゲンバルブなどの通常のライトユニットは放射状に発せられた光をリフレクター(反射板)に当てて跳ね返らせ計算された向きにまとめて(レンズカットやリフレクターカット)照射するようになっています。発光するフィラメントの位置の違いで上下(Hi/Lo)の切り替えも出来る構造です。そのため、LEDバルブに換えた際に、発光体(LED)の位置関係が合わずに光を上手くリフレクターで反射出来ないため光が拡散してしまい、光源は明るくても照射すると暗くなってしまうものが結構見られます。特にLEDは発光体前面にのみ光が発せられるため、かなり位置設定は難しいはずです。
 その為、車検のヘッドライト試験でも合格しないケース(光度不足や光軸不良)も多く、実際には実車で照射して確認するまで判別出来ないのが現状です。配線やレンズの曇りなどの経年劣化による光度低下(暗くなる)への対処としては、まだまだ安定していません
※LEDバルブに替えてピッタリと合ったものでならば、しっかり明るくなり40000cdを記録したケースもありました。
 
 そこでハロゲンバルブのままで確実に光度アップ(明るく)させる方法として、これまでにもリレー回路を使ったヘッドライトチューンアップパーツが有ります。リレーを介することでバルブへの電力を、バッテリーから大容量の配線で直接供給してバルブの能力をほぼ全て発揮させるものです。車両側はスイッチングに用いるだけとなり、配線やスイッチ端子などの劣化による影響を受けなく(導通は必須)なります。また一般の2輪車の場合、回路を複雑にしたくないなどの理由から設計段階からバルブ(電球)の能力を引き出していない車両が多いので、新車であっても効果があります。
※55~60Wのハロゲンバルブの能力は光度試験で18000~20000cd(カンデラ)は十分に有ります。(保安基準は15000cd以上)
 
 画像はチューンアップ回路にさらに加工を加えたものです。本来、H4バルブ(60/55W)の左右2灯式ヘッドライトを、右ライトをLoビーム固定(スイッチをHiにしてもLoビームのまま点灯する)、左ライトをHiビーム専用(スイッチHiでのみ点灯)となるようにしています。
CBR600RRと同様の点灯方式です。
 
 装着車両は、一体型ユニットの左右2灯式ヘッドライトの初期型GSX-R1000です。一体型リフレクター(単独での調整不可)なのですが、本来左右一致するはずのHiビーム光軸がずれてしまっていました。照射状態から右ライト側の不良(中心軸のはっきりしないぼんやりとしている)と考えられました。また回路内抵抗の増大から左ライトですら10000cd程度と暗い状況だったため、この問題の裏技的対処法として、この装置に至りました。結果、保安基準を満たして検査も合格し、明るいヘッドライトになりました。(左ライトHiビーム=18000cd強)
 
ご注意
● 熱などの影響によるバルブ取付部やリフレクターの変形から光軸のずれや光度低下が起こった場合、基本的にはユニット交換が必要となります。
●上記と同様のチューンアップ回路を装着した場合、装着前と比べ消費電力が増加しますので、車両の充電状態を必ず確認しなければなりません。(特に旧車系)

FCRキュブレター換装(ゼファー1100)

2020-07-29
JB-FCR39
ハイスロットル&薄型スイッチ
ブローバイガス還元対応オイルキャッチタンク
ラムエアフィルター仕様
 近年はインジェクション車が多くなり、キャブレター換装があまり無かったのですが、久々にゼファー1100で行うことになりました。
 このゼファーは以前に中古車として購入していただいた車両で、以降ホイール換装などカスタマイズをされていたのですが、仕事環境の変化などがあって数年は乗ることが出来なかったようです。今年復帰することにされ、車検の取得に伴い色々必要な整備が予想されましたが、この機にFCRキャブレターへの換装を決意されました。
 エンジン本体は完全ノーマルのままですが、ゼファーとしては39mm径の大き目のサイズをチョイスしました。乗りやすさ(ある意味ルーズな)を優先して小さ目なサイズを推奨する考え方もありますが、燃調セッティング次第でシビア過ぎない仕上がりは可能で、決して乗りにくいレベルとは思わないので、ある程度大き目サイズを当店ではお勧めしています。(セッティング作業自体はシビアになりますが)
 
 カワサキ車は独特なスロットルケーブルのためハイスロットルKITは必須で、アクティブ製の汎用TYPE-3と薄型スイッチラムエアフィルターを一緒に用意し、FCRキャブレターとともに装着します。この車両では、インシュレーターに劣化のひび割れが見られたため、交換しておきました。全体的にFCRキャブレターの差込部(スピゴット)はきつめの作りなのでひび割れまでは無くても、少しでも硬化していれば交換することが必要になります。セッティングの確認に重要なプラグも新品にしてからエンジン始動します。とりあえず始動可能なレベルの燃調設定なのを確認して、オイルキャッチタンクの製作にかかります。キャブレター換装に必要なパーツが全て揃ったところで、セッティング作業を進めます。
 
 セッティングを進める上で、走行テストをする前までのセッティング作業が重要なプロセス(個人的にプレセッティングと呼んでいます)となります。無負荷運転ですが、ここでどれぐらいのレベルに出来るかでその後の仕上がりまでに大きな影響を与えます。直引き式スロットルバルブのFCRキャブレターはスロットル操作に対するエンジンの反応(レスポンス)が命なので、燃焼状態を手応え振動回転計の動き排気具合(色・匂い・圧力)など5感を働かせて判断して調整していきます。そして実走行テストによる微調整に備えます。現在は、車体各部の整備も終え車検を取得し、最後の走行テストに備えています。
 
※最終的なセッティングは好天の下で行いますが、ベストセッティングは季節・気象条件(気温・気圧・湿度)で変動するため、ある程度シーズンを通じて使える位の仕上がりを推測して決めています。本来はせめて季節ごとのリセッティングが望ましいのですが、当店のFCRキャブレターユーザーの方々は通年同じセッティングで走られています。(多少の我慢はあるのだろうとは思いますが)
 
※追記(8月14日)
 梅雨の明けた8月上旬、晴天の日に実走行テスト・セッティングを行いました。気温30℃以上となり厳しい条件でしたが、主に低・中回転からのスロットルレスポンスの仕上げの調整に注力しました。その結果、2000rpm弱程度の低回転から実用出来る仕上がり(極低回転では極端にラフなスロットルワークは禁物ですが)になりました。最暑季のため、全開域を少し濃い目にして今後の気温低下に備えましたが、今シーズン(冬季まで)は様子を観て変調具合を報告して頂くようにします。
 納車の後、見違えるようになって楽しかったと感想をいただきました。

ワンオフアルミタンク製作工程

2020-07-01
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 ワンオフ製作のアルミタンクですが、DRZのお客様が遠方の方だったことで、はじめにお電話で当店の製作するタンクの特徴や製作方法などの説明をしましたが、分かりずらいものだったのではなかったかと感じました。
 当店のタンク製作方法は、ワンオフ製作を出来るだけ簡潔な工程で行うことに特化して考え出した工法です。本来(他工房)の工法とは異なり、ある意味で邪道?とも言えるものです。これまでは、県内の方のご依頼だったので、都度説明していましたが、説明だけでは理解しずらいものだろうと思います。これまで詳しい製作過程は紹介しないでいましたが、ここで少し解説したいと思います。
 
 画像1:まず、車体フレームに対してベースとなる内板を作ります。このDRZでは剛性UPとガソリンの急激な前後移動を抑えるための仕切り板を取り付けています。
 
 画像2:外板の中から基準となる面から組み立てるように貼り合わせていきます。基準となる部分はこの場合はシートの当たる背面とキャップの付けられる上面です。あとは、デザインを考えながら各面をつくります。この1面から2面分位を1枚板で作り上げていくのが当店の特徴で、徐々に組み上げていくため型が無くてもタンク製作が可能になっていすます。丸みのあるデザインでは面の取り方を工夫しながら、叩き出しで曲面を作ります。
 
 画像3:外板を組み上げる工程では内板とは仮付けだけで、底板を除く外板を全て貼り合わせ本溶接をしたのちに取外し内側からも溶接を施します。角の小さい丸みを作りつつ外面の溶接痕を削っても、内側の溶接ビードの盛りが骨格の役割も果たし強度が保たれています。 
 
 画像4:タンクキャップ受け部を作り、形の出来上がった外板に取付けます。そののち、削りの終えた外板と内板を合体しつつ、底板を作って貼り合わせ一体として溶接して本体が出来上がります。本体に各部のフィッティング部材を位置合わせに留意して取付けていき完成します。
 
 この製作方法によって型を用いずにタンクを製作しています。この工法では、溶接箇所が増えることと内側からの溶接で歪みが起こりやすく補正を必要としたり、曲面同士の突き合わせが難しいなどのデメリットがあります。そのため複雑な形状や丸みの大きな形状では、難易度が高く、現在の技量では製作が困難なものがありますが、今後も技術の向上に励み、いろいろなものを製作したいと思います。
 
※概算の製作費は、大きさや形状によりますが、おおよそ15~30万円程度になります。特に形状により製作工程を変えているため製作費への影響は大きく、また正確な見積りが困難で見積りからの変動もございます。

充電系カスタマイズ

2020-06-07
SRデモカーの装着画像
右:電圧計、左:油温計
Z1-R(SPL)の装着画像
 カスタマイズと呼ぶには、少し地味な内容ですが、最近取り組んでいるのが充電系電装です。発端は、よくトラブルを起こす充電系(特にレギュレーターまたはレギュレートレクチファイヤ)に対して何か対策を施した物がないか探していたのが始まりです。そこで見つけたのがH-CRAFTさんの製品でした。主に純正に対して放熱性や内部の半導体の容量などを上げた強化タイプがラインナップされており、修理のために取扱いを始めました。
 そこで目を見張った物がM0S-FETと称されているタイプの製品です。この製品の特徴は現在有る全てのバイク用バッテリー(開放型・密閉式MF型・リチウムイオン系)に対応するということです。これには驚きました。それぞれ違った弱点を持ち(リチウム系は高電圧に弱く、MF系は大電流に弱いなど)全ての型に対応するとなると、かなりの定電圧・定電流に制御出来るシステムなのだと思われました。ただ、旧車から最新型の車両では発電量や消費電力の大きさも様々なので大丈夫?という疑問も持ちました。
 そこで、当店のSRに装着して実験してみました。このSRは、2001型常時点灯式ですが、POSH製イグナイターにした際にエンジン始動時の電圧確保のため、ヘッドライトスイッチを追加しています。ヘッドライトのON/OFFによる消費電力を大きく変えながら、実験をすることにしました。
 その結果、ライトのON/OFFの2通りの充電電圧には、最小・最大とも0.1Vの差で14.1V-14.3V程度、充電電流は0.1Aの差で最小・最大とも1.0A程度でほぼ一定を保っている結果となりました。理想的な、定電圧・定電流の充電状態です。すごいことですね。リチウム系バッテリーをはじめ、安全に使えます。あとは、耐久性だけですが、これは、すぐには結果は出ないので、引き続き走行し様子を見ていきます。電圧だけでも、走行中にチェック出来るように電圧計を装着しておきました。
 
 また、SHORAIバッテリーを搭載していたカスタムZ1-Rのオーナーさんにも、相談して装着していただきました。ZX10Rのジェネレーターに変えた当初は良かったのですが、最近は電圧が不安定なこともあり、見直しを兼ねて協力していただきました。その過程で接続部の焼損が見つかりました。やはり、発電・充電系は電力として大きく注意深く経過をチェックすることが、必要だと感じました。
 
 優れた点火系やメーターなどの電装部品も、安定した電気の供給があればこそ、その効果を発揮出来るので、優れた充電系が色々な車種で確立出来る可能性を見つけていく道が広がったと思います。今回のSRやZ1-Rには、専用品など有りませんので、汎用品を加工して装着しています。安易な作業は危険を伴いますので、くれぐれもご注意ください。
 
追記
   MOS-FETとは、電界効果トランジスターの一種で、大電流を高速でスイッチングするのに適しているものだそうです。確かに充電系には適しているようです。耐久性にも期待出来そうです。
 
 
 
 

2019仕様RC390

2020-02-03
ステップ仕様変更
レーシングバブルスクリーン
SKFフォークシール
 あまり進展のなかったRC390でしたが、細かなカスタマイズと仕様変更をしていたので、2019仕様としてご報告いたします。
 
1:ステップバーの位置変更です。やはり少し高すぎたようでしたので、約15mm下げました。1ポジション仕様でしたが、ベースプレートの設計に余裕を持たせてあったので、振り子式に可変させる2ポジション式にしてあります。
 
2:サーキットでのみ使用していた "レーシングバブルスクリーン"をストリートで使いたいと思っていましたが、ヘッドライトの熱に負けるため、今回、LEDバルブと併用して使うことにしました。
LEDバルブはあまりスペースに余裕がないので、ファンレスタイプにしています。(価格も手ごろな物で)それに伴いウィンカーの位置を変更することになりました。
 
3:画像は分かり易いよう、SKF製フォークシールを撮影したものですが、オーバーホールを兼ねて内部仕様のセッティング変更をしました。以前、油面調整とフォークトップのアジャスターの取付をしていましたが、この度はオイル粘度油面スプリングスペーサーの厚さ(イニシャルプリロード調整)そしてSKFのシールでフリクション低減といった内容です。分解して分かったのですが、構造的にフォークトップのアジャスターは車高調の役割をしていたので、プリロードは分解しなければ調整出来ないようです。スプリングがダブルレートだったので、シングルレートにしたかったのですが、オーリンズなど発売されていなかったため今回は断念しました。これでもかなりフロントがしっかりストロークして乗りやすくなっています。
 
ここまで、カスタマイズを続けてきたRC390ですが、後はかなり大掛かりなものとなってしまい、手頃なスポーツバイクとしてはどうか?と思われるので、今後は細かな変更や調整に留めようと思っています。
 
次回からは、SRをはじめ、当店で進行中のカスタマイズを紹介していこうと思います。タイトルも改め
 
パドックⅢカスタマイズ計画  とします。引き続きよろしくお願いいたします。
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