ワンオフパーツ作品集
Z1ジェネレーター&ワンウェイクラッチ
Z1ジェネレーター&ワンウェイクラッチ
エンジンチューンを施して、しばらく(2~3年)するとスターターモーターからクランクシャフトに伝達をする、ワンウェイクラッチ関係に問題が発生しました。
Z系エンジンの始動系統はクランクシャフト同軸上の、スタータードリブンギヤからワンウェイクラッチを介して、ジェネレーター(発電機)のローターにスターターモーターの回転を伝える構造になっています。ワンウェイクラッチのハウジングがローター背面に、3本のM8ボルトで固定されていますが、このボルトやローターのネジ穴が力に負けて、緩むようになってしまいます。Z1のローターは発売中止となっていて、代替品も見当たらず、ローターがなんとか使用できるうちは、ワンウエイクラッチ周りを修理してきましたが、とうとうローターが修復不可能な状態にまでなってしまいました。
そこで、他車種用を流用している商品の情報を得て、そちらの購入も検討しましたが、そちらの商品でも、それなりに加工も必要なことから、当店でワンオフ加工・製作をすることに至りました。
ジェネレータやワンウェイクラッチの回転方向を考慮した結果、2011年以降ZX10R用のパーツを流用してみることにしました。使用するのは、ジェネレーターのローター及びステーターコイル、ワンウェイクラッチの3点と、寸法取りの為のワンウェイクラッチハウジングを兼ねたドリブンギヤを取り寄せ、Z1純正の各部・部品と比較し、各部の加工や部材の設計を行いました。
ZX10Rローター・Z1スタータードリブンギヤを加工し、ローターをクランクシャフトに取付るホルダー部と、ワンウェイクラッチハウジングを兼ねた部品を、製作しました。、この部品にローターを圧入・溶接して、ローター本体に負荷を掛けることなく、クランクシャフトに駆動力が伝わる構造にしています。
ジェネレーターカバーにステーターコイルを取付るベースとなる部材を製作し、カバーに溶接する予定でしたが、過去に転倒していた為、歪みがあり、カバー側面を作り直す形になりました。中心の位置出しに工夫を強いられましたが、完成させることができました。
この流用の結果、いろいろな利点が生まれます。
1:ZX10R用ワンウェイクラッチは、過去一般的だった3本ローラー式と異なり、15個程度のカムが食
い付いて力を伝えるので、伝達が確実な上、部品の負担が減って耐久性が増します。
2:ZX10R用ローターは、アウターロータータイプとはいえ、希土類磁石(通常はフェライト磁石)を採
用した超軽量型となっていて、クランクマス(回転重量)が軽くなり、エンジン回転のレスポンスが
良くなります。(ホルダー部の設計で更なる軽量化も視野に入れています)
3:発電量が多くなる上、PMC製レギュレーターとの相性も良く、既に使用しているリチュームフェラ
イトバッテリー(SHORAI製)に適切な電圧が供給されるようになりました。
試作に近いワンオフ製作のため、各部の寸法やクリアランスに、安全マージンを多目に取ったので、張り出しをあまり抑えられず、ほぼZ1純正と同等となってしまいましたが、今後、耐久性の結果次第では、さらに幅を詰めることも可能だと思われます。検証を重ね、より良いものにしていきたいと思います。
製作:2017年4月