パドックⅢ カスタマイズ計画 ブログ
オイルタンク製作・KSRⅡ
2024-03-18
ホームページのリニューアル(編集ソフトの変更)に伴う、データ移行のために更新できない期間が出来ていました。その間にも、いくつかのカスタマイズ依頼にお応えしていました。製作過程も掲載したかったのですが、完成して納品した物もあります。ここで紹介する「KSRⅡ用オイルタンク」も、すでに納品させていただいたものです。
このオイルタンク製作は、関東の方からのご依頼でした。2ストローク車のアルミ製オイルタンクは、当店のRZでも製作した経験はありました。その際は、設置場所の変更をするために製作したのですが、残量確認がしにくかったり補給時に注ぎにくいなど、使い勝手は決して良いものではありませんでした。
このお客様もその辺りのご心配はされていて、設計へのご要望は以下の3点でした。
1)残量確認の出来る工夫をすること
2)タンクキャップは純正のはめ込み式から、キャップの締りの確実なネジ式に変更すること
3)設置場所は変わらないので、出来れば純正同等の容量(少し減るくらいは可)にしてほしい
このご要望を受けて、小さく作れれば比較的に問題ないものの、純正相当の容量にしようとすれば、まずは純正タンクの複雑な形状(凹凸)を、容量を減らすことなく、どこまで簡略化(複雑な形状はコストが高くなってしまいます)することが出来るのか?また、それに加えて残量確認の「インジケーター」はどのように設置できるのか?など、かなり条件は厳しくなります。
お客様には単体のフレーム(確実な取付のための治具として)を送っていただいていましたが、それだけではエンジンやその他の車体パーツとの位置関係が分からないため、設計するのは困難でした。そこで当店の古くからのお客様でKSRを所有されている方に、車両をお借りできないか頼んでみました。快諾いただいてバイクを借り受け、実車で各部を確認して、ようやく設計を始めることが出来ました。
実車に搭載されたオイルタンクを確認すると、複雑な凹凸の内、タンク内側面(フレーム側)前方のレギュレーターを避けた段差以外はシュラウドを避けることと、エンジン熱を受けにくくするためだと思われました。
まずは、レギュレーターを移設することを前提に、内側面を「平ら」にすることにしました。その他は、フューエルタンクとシュラウドに干渉しない範囲で、出来るだけ単一の斜面となるように設計した結果、9面体にまで簡略化した形状に出来ました。容量は相対的に「大きく」なったくらいでした。
残量確認のための「インジケーター」として、透明なホース(耐油性の)を使ったものを考えていましたが、設置できそうなのは外側面しかなく、取り出しパイプの張り出し寸法には、あまり余裕がありませんでした。
これまでは、アルミ製丸パイプをL型に組んでタンク本体に溶接していましたが、これだと最低でも30mmくらいは張り出してしまいます。そこでもっとタンク本体に沿うような方法として、「バンジョウアダプターとバンジョウボルト」で取り出す方法を考えました。
ゴムホース差込式の「バンジョウアダプター」がないか探したところ、モンキーなどのカスタム用オイルクーラーKITの中にホース差込式アダプターのものが有りました。対応するホース径も、インジケーターとしてほど良い上、補修部品として、「バンジョウアダプター&ボルトSET」が販売されていたので好都合でした。これと耐油性クリアピンクホースを組み合わせて、インジケーターとすることにしました。
この方式だとシュラウドとのクリウランスに余裕が出来て、レイアウトもシュラウドの風抜けホールから覗けるように設置することが出来ました。
「ネジ式タンクキャップ」には、以前から好んで用いている(簡易的な燃料タンクなど)、旧型のRS125/250の「フューエルタンクキャップ」にしました。キャップ自体も安価(当時)な上、ガソリン対応で耐油性が高くブレーキフルード以外なら色々な液体タンクに使えるため重宝するので、取付部(注ぎ口)をまとめて製作して在庫していました。
通常の純正オイルタンクだと注ぎ口が狭く、オイル補給時に中が見えなくなって、よくあふれさせてしまいますが、こちらの部品だと広い注ぎ口で、かなり注ぎやすくなると思います。
その他では、オイルポンプホースへの接続には、ホンダ純正品(2stスクーター用)のストレーナー内蔵式ジョイントを使う設定としました。また、純正のオイルレベルスイッチも装備出来るようにしています。振動対策には、本体のフレームへの取付部をラバーマウントとしました。
材質は、取付ステーとその溶接される面は「アルミ7N01材」、その他の面には「5052材」、キャップ取付部に「2017材」を使っています。※2017材(ジュラルミン)は溶接強度が低く、溶接部に高い強度が必要とされる構造部材には使えませんが、硬質で切削性も良くしっかりしたネジ山が作れます。
※画像④で中に入っている液体はガソリンです。浸透性の高いガソリンで漏れ試験をしています。
※重宝していた、旧RS系タンクキャップでしたが、すでに生産終了していて、この度も手持ちの中古品で了承していただきました。まとめて製作していた取付部も最後の1ヶでしたので、今後は他に替わる物を探す予定です。
お客様とは図面と画像でやり取りしていましたが、実際に現物を確認されて想像以上の出来だったと評価いただき、安心しました。